ここ数年、グローバルに事業展開する大手投資顧問会社では、日本法人のスタッフ縮小の動きが相次ぎました。つい最近も、ある外資系投資会社で投資責任者を含む社員10人ほどがリストラされたとの話を耳にしたばかりです。しかし一方で、新たに人を増やす外資系投資顧問会社も現れています。また、欧州の債務危機や景気減速を背景に、投資家の目は確実にアジアに向けられています。11月号では「相次ぐ対日ファンド組成、投資機運の復活をめざす」と題して、新たなファンド立ち上げの動きを掲載しました。各ファンドの投資額もまとめていますので、今後の不動産市場を予測する材料としてご覧下さい。

 本誌が毎年、定点観測している銀座でも、不動産市況にやや明るさが見えてきたようです。長らく売りに出ていたビルや開発用地に買い手が付き、取引件数は増加傾向に転じました。リーマンショック前には及ぶべくもありませんが、一等地では価格上昇の兆しもみられます。新たなホテルや商業施設の開発計画も動き出しました。本号の特集では、こうした銀座の「今」をお伝えしています。

 もう一つの特集はオフィスビルテナント実態調査の第2弾です。前号の「現状分析編」に続く「将来展望編」として、テナントの今後の移転動向に焦点を当てています。調査では、実に3割ものテナントがオフィスを移転する意向を持っていることが判明しました。移転先の人気1位は丸の内・有楽町・大手町エリア。一方で、虎ノ門エリアの注目も高まっています。ほかにも、日本企業・外資系企業別の移転理由や、妥当と考える賃料水準、賃料相場の見通しなど、興味深い調査結果を報告しています。

 なお、本誌ではこれらを含む膨大な調査結果を、約1000ページに及ぶ「テナント調査報告書2012」にまとめました。東京都内にある主要ビル約540棟のテナントリストや、この10年間に小誌が収集した延べ2300社の移転事例なども収録しています。詳細についてはこちらをご覧ください。

三上 一大