東日本大震災以降、テナント企業の移転先ビル選びの視点が大きく変わりました。防災・省エネに関する性能をより重視する企業が増加しており、ビル事業者もこうしたニーズの変化を無視できなくなっています。日経不動産マーケット情報では、震災によるニーズの変化を明らかにするため、都内主要オフィスビルのテナントを対象にアンケート調査を実施しました。これによって、実に興味深い結果を得ることができました。

 調査では、「節電」、「防災」、「省エネ改修」、「標準内装」などに関するテナントニーズを探っています。震災後の節電では、その収支についてビル事業者から納得のいく説明を受けていないテナントが6割を占めました。一方、震災後のビル事業者の対応に関してテナントの満足度が高かったエリアは「丸の内・有楽町・大手町」でした。このエリアでは、ビル事業者によって電気代の還元や節電協力金の支払い、節電収支の説明などの対応が多く見られたエリアでもあります。

 このほか、テナントの約半数が「電気料金削減内なら省エネ改修費を負担してもよい」と回答し、7割が「標準内装以外でのオフィスの提供」を求めていました。これらの結果は、従来、考えられてきたテナントの意向とは違っており、市場の常識を疑う必要も出ているようです。調査結果のサマリーを9月号に掲載するとともに、調査の全貌をレポート「3.11以降のオフィスビルテナントニーズ」として販売しています。より詳細な内容を知りたい方は、こちらからお求めください。

 9月号では、2012年4月~6月の売買事例も分析しました。2012年に入って売買件数、金額とも堅調に推移しており、ここへ来て新生銀行旧本店などの大型売買も増加しています。記事は、本誌が独自に算出・推定した利回りデータ、売買単価などの市場分析に欠かせないデータも充実しています。

 売買レポートはMGPAによるオフィスビル8棟の取得をはじめ、コモディオ汐留、和光並木館の大型売買など、全23のケースを掲載しています。オフィス移転・賃料調査は品川区と区部西地域(中野区、豊島区ほか)を取り上げました。ダイジェストでは「今月の注目レポート」と題して、シンクタンクなどがまとめた調査レポートのなかで、特に注目度の高いものを紹介しています。シンクタンクなどがまとめた不動産市場に関するレポートは、本誌ウェブサイトの「市場分析レポート・ディレクトリ」に収録しています。

徳永 太郎