オフィス仲介会社の調査によると、都心5区のオフィス空室率が過去最高を更新しています。三鬼商事のデータでは2012年6月末の空室率が9%を超え、完成後1年以内の新築ビルは30%台後半という高い水準に達しています。空室率の指標だけを見ると市況の悪化具合が際立っているわけですが、個別のビルの動向やテナントニーズの変化を追いかけていくと、市況には回復に向けて薄日が差していることがわかります。

 本誌では、2011年~2013年に竣工する延べ床面積2万m2以上のオフィスビル45物件を対象に、テナントの内定状況を調査しました。結果は本誌8月号に載っています。各ビルの延べ床面積とテナント内定(稼働)率が一目でわかる図表を掲載していますので、まずはそれをご覧ください。空室率の数字だけでは読めない市況の姿が見て取れると思います。

 新築ビルの供給量が多いため市場全体の空室率は高止まりしていますが、完成の半年以上前にテナントが9割決まるビルがあるなど、内定状況はビルごとのばらつきがかなり大きくなっています。新築ビルへの移転で生じた既存ビルの2次空室に早々と後継テナントが決まるケースも珍しくなく、いま企業移転が活発になっているのです。

 同時に、アナリスト16人に対してオフィス市況予測のアンケートも実施しました。本誌2月号掲載の「オフィス市況アナリスト調査」のいわば続編にあたるもので、今回はこれから1年半の市場動向を予測してもらっています。詳しい予測結果は本誌を参照していただくとして、アンケートでは「稼働率は2012年後半から、賃料は2013年から本格上昇へ向かう」という見方が大勢を占めました。

 8月号には、名古屋の市場動向も特集しています。名古屋ではオフィス市況が依然として低迷しており、名古屋駅周辺で進む大型開発による供給過剰が市場の足かせになっているようです。ただ、賃貸マンションへの投資事例が増加するなど、新しい動きも出てきました。名古屋市中心部の不動産売買事例の一覧とともに、市場動向を詳細にお伝えします。

 8月号の売買レポートには、かねて注目されていた新生銀行旧本店ビルの入札結果を掲載しました。優先交渉権を得たケネディクスの活用方法も含めて、今後の動向にも注目です。このほか、富士火災銀座ビル、青山ベルコモンズなどの大型取引も掲載しています。オフィス移転・賃料調査では中央区とさいたま市です。

徳永 太郎