東京・都心部の新築大規模ビルでテナントの移転が続々と決まっています。本誌ウェブサイトでも「日本製紙が御茶ノ水ソラシティに本社移転」「住友不動産渋谷ガーデンタワーにサイバーエージェントが入居」など、企業移転のニュースを随時、速報しています。編集部には、ほかにも大型テナントの移転情報が次々と飛び込んできており、取材に追われているところです。

 今年はオフィスビルの供給が近年のピークとなります。さすがに開業時に満室となるビルは少ないものの、企業の集約ニーズを集めて新築ビルの稼働率は徐々に高まってきました。来年以降、新たに完成するオフィスビルが激減することもあって、企業の移転需要が顕在化しているようです。

 6月号では、毎年恒例の「これからできる大規模オフィスビル調査」を特集記事として掲載しました。調査結果によると、2012年は213万m2のビルが完成するものの、2013年は80万m2と激減。その後も、2014年は86万m2、2015年は90万m2と、数年にわたって100万m2を下回る低水準が続くことがわかりました。今年の大量供給の反動で、新たに浮上したオフィス計画は14棟。この数年の調査では最も少なくなりました。

 ただ、将来的にオフィスが建設されそうな土地が都心のあちこちに点在しており、市況を見通すにはこうした“タネ地”の動向にも目を配る必要があります。特集記事では、新築ビルの動向だけでなく、主なタネ地の概要も掲載しています。また、今年も調査結果をまとめた大判のポスターを作成し、来月には読者の方々にお送りします。一般にも販売する予定です。

 6月号には、2012年1月~3月の売買事例を分析した記事も掲載しました。売買件数は増加傾向にあり、高額取引も目立つなど市場は活気づいてきました。今号の記事では100億円以上の大型取引の一覧をはじめ、このところ活発になっている物流施設の取引・開発事例や、本誌が独自に推定した利回りデータなど、市場分析に欠かせないデータをまとめています。

 売買レポートは東急電鉄グループによる渋谷のビル取得のほか、荒井商店やドイツの運用会社AM alphaによる大型物件取得など、24事例を掲載しています。オフィス移転・賃料調査は港区と大阪市の動向を取材しました。

徳永 太郎