フランス南東部の都市カンヌは、毎年5月に行われる「カンヌ国際映画祭」の開催地として有名です。一方、このリゾート地では、毎年3月にたくさんのスーツ姿の人々が行きかう光景が見られます。世界最大の不動産カンファレンス「MIPIM(ミピム)」が開催され、各国の不動産投資関係者がビジネスチャンスを求めて集まるのです。

 今年3月6日から開催されたMIPIMでは参加者が昨年を5%上回り、盛況のうちに4日間の日程を終えました。本誌も現地に記者を派遣し、5月号にレポート記事を掲載しています。ドイツ銀行の不動産部門RREEF(リーフ)の行方や、投資プレーヤーとしての存在感が高まる政府系ファンドの動向など、会場で話題となった最新トピックを現地のにぎわいとともにお届けします。

 記事には、イギリス、ドイツ、フランスの大手不動産投資プレーヤーへのインタビューも掲載。彼らの投資戦略を明らかにしました。震災を乗り越えた日本には、再び海外の投資からの関心が高まっていることがわかります。このほか、中国政府による土地政策の難しいかじ取りも紹介しており、不動産投資市場を取り巻くグローバルな話題で満載の記事となりました。

 さて、このところ本誌が報じるオフィス移転に関するニュースをみると、「事業継続計画(BCP)の強化」を移転理由に挙げる企業が増えています。昨年の震災以降、企業のBCPへの意識は高まっており、このニーズを取り込もうと、不動産会社もビルの防災機能を充実させる取り組みを進めています。5月号では、震災をきっかけに変わりつつあるビルづくりの動きをまとめました。耐震性向上や非常時の電源確保などの面で興味深い試みが登場しています。震災以降に計画された大規模オフィスビルは、既存ビルや中小規模ビルに比べて防災面のスペックが一気に向上しているようです。

 5月号の売買レポートは米フォートレス、英グロブナーによる投資事例や、アンジェロ・ゴードンによる紀尾井町ビルの持分取得などを掲載しました。ここでも海外投資家による対日投資が復活しつつあることがうかがえます。オフィス移転・賃料調査では渋谷区、横浜市・川崎市の最新マーケットをまとめています。

徳永 太郎