今年はなんとか節電の夏を乗り切ることができました。賃貸オフィスビルにおいても、オーナー、テナント、管理会社が協力して様々な節電策に取り組んだところも多かったはずです。ただ、夏を終えたいま、ふと疑問が浮かんできます。「節電で浮いた費用は誰のものなのか?」

 本誌では、郵船不動産が節電で削減できた約1000万円を約110社のテナントに還元したことを契機として、「節電で浮いた費用をテナントに還元すべきかどうか」というテーマを掘り下げてみました。業界団体は「還元する必要はない」と説明しているものの、法律家は「還元するのが妥当だ」という違った見解を示しています。この問題を追いかけると、定義があいまいな「オフィス共益費」の本質を考えることにもつながっていきます。詳しい内容はぜひ、本誌11月号でお読みください。

 読みどころ満載の11月号では、不動産インデックスの最新動向に関する記事も読み逃さないようにお願いします。リスク分析に欠かせない不動産インデックス。年金基金や一般機関投資家などの資金を不動産投資市場にもっと呼び込もうと、様々なインデックスの整備が急速に進んでいます。本誌記事では、不動産価格に関する主要インデックスを紹介しています。インデックスはそれぞれに特徴があります。記事では、利用者が目的によって使い分けるためのヒントも解説しています。

 さらに11月号には、恒例の「取引される街・銀座」も載っています。本誌では、毎年、銀座を定点観測し、取引や開発の実態をレポートしてきました。銀座という街は商業、オフィス、住宅という様々な用途を抱え、日本内外の投資家からの人気も高く、東京全体の不動産投資市場を考えるうえで常に注目されているエリアです。今、銀座で何が起きているか、本誌でご確認ください。

 売買レポートでは不二家旧本社ビルを米FortressのSPCが取得した事例など、21の話題を掲載しています。オフィス移転・賃料調査では渋谷区と横浜市・川崎市を取り上げました。

 日経不動産マーケット情報では、11月に二つのセミナーを開催します。11月7日開催の「サステナビリティーがビルの競争力を左右する」と、11月18日の「中国内陸部・大中都市進出フォーラム」です。いずれも、いま非常に関心が高いテーマで、強力な講演者に登壇いただく予定です。ぜひ、ご参加ください。

徳永太郎