正直に言うと、私はマスコミにおける最近のソーシャルメディアの持ち上げ方にはいささかうんざりしていた。友人の誘いでTwitterに登録はしていたものの、書き込みはほとんどしていなかった。エジプト革命とFaceBookを結びつける論調にも違和感を感じていた。この冷めた目線は、過去に10年ほど経験したIT記者としての生活で、幾多のブームの終わりを見てきたせいかもしれない。

 それでも、3月上旬に仏・カンヌで開催されたMIPIM(不動産国際見本市)の取材では、いや応なくこれらのメディアの力を認識させられることになった。MIPIM事務局は、今年からTwitterやiPhoneアプリでリアルタイムの情報発信を開始している。これらは会場で、50を超えるコンファレンスと数え切れない展示ブースのなかから取材対象を絞り込むのに役立った。また、MIPIM独自のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)であるMIPIM Worldでは、2万人近い参加者が相互にメッセージ送信できる。私もインタビュー先の開拓に活用した。

 何にも増して貴重に思えたのは、3月11日の地震発生直後に友人たちのTwitterアカウントから届いた臨場感のこもったつぶやき、あるいはリツイート(転送)されてきた津波被害や原発の報道だった。徹夜明けの朝、原稿を編集部に送り一息ついたところに飛び込んできた衝撃的なニュース。東京の家族からは、電話回線が軒並み不通となるなか、唯一機能していたSkype(インターネット電話)で無事の知らせが届いた。帰国便の欠航が相次ぐなか、予定便がかろうじて飛ぶことを教えてくれたのもエールフランスのTwitterだった。被災者の心の痛みには比べるべくもないが、心細い一人旅にあって、これらの情報がどんなに支えになったかわからない。

 帰国の途につく1時間前、インターネット放送のUstreamで臨時中継されたNHK総合放送を通じて、福島原子力発電所の1号機の爆発を見た。興奮と不安と情けなさが入り交じった、表現しがたい感情がわき上がった。

本間 純