「AKB48現象というのがあるんですよ」と知り合いから聞いた。不動産市場で大型の売り物件が少なくなっていることから、総額が大きいバルク物件に人気が流れている現象を指すという。曰く「一つひとつの物件には飛び抜けた魅力がなくても、かたまりとして見るととても魅力がある」。なるほどと思ったが、私自身がAKB48をそう見ているわけではないので悪しからず……。

 こういう話が出るほど、今年の不動産市場には活気がなかった。最悪期は脱したものの、深い谷底にいるというか、気味が悪い凪の状態が続いているというか、取引が少ない状況がずっと続いている。不良債権などの取引が活発になっているようだが、これらはなかなか表面化しない。実物不動産に限ると、総額10億円台以下の物件やマンション用地は活発に取引されている。ただ、大型物件や投資家にとって魅力的な物件が市場に出てきても、売り主の希望価格と買い主の提示価格に大きなかい離があり、なかなか取引が成立しない。

 流行語になった「ととのいました」というわけではないけれど、今の市場は「初めてのお見合い型」と言える。互いに遠慮しているのか、それぞれの目線(売り主と買い主の価格目線)が合わずに何も進展しない。来年は大恋愛に発展するような活気にある市場になってほしい。

徳永太郎