カンヌの海岸線
カンヌの海岸線

 ニース国際空港からカンヌ近くのホテルに向かうタクシーの中で、運転手から最初にかけられた言葉が「日本は大丈夫か?」だった。

 フランスの新聞の一面は連日、金融危機関連の見出しで埋まっている。こうしたなか、トヨタの苦境や日本の経済政策の混乱もまた連日取り上げられており、市井の人々はよく知っている。

 日本に期待する投資家はまだ残っているが、安全な投資先としてというよりも、融資の借り換え失敗などで市場に放出される物件(ディストレスト・アセット)への投資機会に期待する声の方が多い印象だ。筆者は11日に開催された「Asia fights back」と題されたパネル・ディスカッションの席で、皮肉にもパシフィックホールディングスの経営破綻を初めて耳にすることになった。

 もっとも、この状況は金融危機後の世界に共通する話題。アイスランドを筆頭に欧州の金融危機は深刻さを増しており、カンヌの会場で配布されているオランダの新聞にも「市況回復は2011年までない」といった記事があった。米国の不動産への投資を扱ったセッションでは、IT産業が盛んな東海岸のボストンや石油エネルギー産業が盛んなテキサス州の諸都市などで、これまで比較的堅調だった不動産市況に実体経済悪化の影響が出てきていることが報告された。

 「There's no place to hide ― 危機から隠れる場所などどこにもない」。同セッションで、投資顧問会社の米Principal Real Estate Investorsのマネージングディレクター、Jay Davis氏が発した言葉が印象的だった。

 人々が口にするのは「いつ景気が底を打つか」ばかり。会場がある海岸線の明るい青空とは対照的に、会議は暗い話題で持ちきりだ。

(本間 純=仏カンヌ)