不動産会社の経営破たんが続いている。日経不動産マーケット情報が2008年8月に伝えた記事だけでも、アーバンコーポレイション、セボン、創建ホームズ、都市デザインシステムの4社が裁判所に民事再生手続きを申請した。連日のように経営破たんの記事を書いていると、やはり気分が滅入ってくる。

 破たんした企業のうち、都市デザインシステムとセボンについては、個人的にも残念に感じた。どちらも、記者が以前在籍していた建設専門誌「日経アーキテクチュア」でよく取り上げてきた会社だからだ。都市デザインシステムは、小規模なマンションの購入希望者を集めて組合を結成し、計画段階から間取りなどを自由に設計できる「コーポラティブハウス」のコーディネート事業会社として、たびたび誌面に登場している。セボン(当時の大伸フード)は1990年代後半から、長屋形式の集合住宅である「タウンハウス」の開発に乗り出して業績を伸ばし、話題になった。

 しかし、ここ数年の不動産投資市場の活況と金融機関の融資拡大に乗じ、2社とも最近では、ホテルの投資開発事業など、より高い利益率を見込める事業の比重を高めつつあった。

 もともと企画力で伸びてきた会社だけに、「安易に市況の波に乗らず、コーポラティブハウスやタウンハウスの事業だけを続けていれば……」とも思うが、不動産市況が上向いたことで、これらの事業の継続が難しくなっていた面もあるようだ。

 コーポラティブハウスやタウンハウスは共に、大手デベロッパーが手を出さないような中小規模の土地を対象にするケースが多い。条件の悪い土地を割安に取得し、企画・設計で付加価値を付けることで事業が成り立ってきた。しかし、不動産市況が上向くとこうした土地にも買い手が現れ、用地の取得が困難になる。都市デザインシステムの広報担当者は日経アーキテクチュア2007年12月10日号で、次のように語っている。「2000年から01年ごろは、年間10数棟のペースでプロジェクトをスタートさせることができた。当時は20戸程度の小規模な土地を取得するのにデベロッパーと競合することはなかったが、近年は競争が厳しくなっている。最近は年3~5棟スタートする程度だ」。

 都市部を中心に、コーポラティブやタウンハウスといった形式の集合住宅のニーズは根強くある。2社の民事再生の行方はわからないが、これまで築いてきた事業ノウハウが、何らかの形で引き継がれるといいと思っている。

岡 泰子