テーマパークや遊園地のような商業施設を運営する事業者は、事業計画や運営状況を店舗テナントにどこまで説明するべきでしょうか。今年3月、大阪・フェスティバルゲートをめぐる訴訟で、事業者の法的責任についてあらためて考えさせられる判決が出ました。

 裁判では、フェスティバルゲート内の店舗テナントが、店舗の収益が上がらなかったのは事業者の説明不足やずさんな施設運営が原因だと主張しました。判決も、契約時に事業計画などを説明しなかったことなどを重視して、事業者の説明義務違反や不法行為を認めています。

 裁判の詳しい内容については、日経不動産マーケット情報7月号をお読みください。この判決が興味深いのは、「契約当事者間の情報量に格差がある場合、それが訴訟リスクにつながる」ことを示した点にあります。オフィスビルなどでは、ビル全体の詳細な事業計画や経営状況などをテナントに説明することはないでしょう。しかし、テーマパークや遊園地のような施設では、施設全体の集客力がテナントの収益を大きく左右します。こうした施設においては、訴訟リスクを回避するという意味でも、事業者が事業計画や経営状況などの情報をテナントにできる限り開示する必要がありそうです。

 7月号では、渋谷区神宮前地区に点在する「手付かずの開発用地」にもスポットを当てました。ブランド店が立ち並ぶ表参道の裏手では、更地や空ビル、時間貸しの駐車場などが増えています。開発の概要を示した看板を掲げたまま、一向に建設が進まない土地も見られます。日経不動産マーケット情報では、2006年9月号でも表参道周辺地区の開発動向を取り上げました。この時には、活発な商業施設開発が地区全体の募集賃料水準を押し上げている構図をお伝えしています。2年の間に、状況は様変わりしました。投資環境が悪化したいま、抱えた開発用地をいかに活用していくのか――。所有者たちは決断を迫られています。

 7月号の売買レポートでは、森ビルによる紀尾井町ビルの取得や、ローンスター・リアルエステート・ファンドによる新生銀行目黒フィナンシャルセンターの取得など、23事例を掲載しています。賃貸オフィスマーケットに関する記事も充実しています。新宿区と多摩地区の賃料動向をまとめた記事に加えて、東京都心部の最新状況をまとめた「オフィス市況トレンド」を掲載しました。

徳永太郎