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らせん状のスロープが挙式の演出装置であると同時に、構造体を兼ねる「リボンチャペル」。実は中村拓志氏が発注者に提出した第1案、第2案は全く別の形だった。2度の練り直しを通して、プロジェクトの課題を明確化し、提案内容を大きく進化させた。

 「世界から人が集まってくる、アート作品のような建築が欲しい」。リボンチャペル(Ribbon Chapel、日経アーキテクチュア2014年8月25日号参照)〔写真1、図1〕の設計は、発注者のそんな言葉から始まった。

〔写真1〕ホテルの一画に建つ結婚式用チャペル
完成建物の外観。らせんは構造体であり、屋根や壁の役割も果たす。視線の抜けなどを考慮し、提案時とはらせんの向きを反転させた(写真:生田 将人)
完成建物の外観。らせんは構造体であり、屋根や壁の役割も果たす。視線の抜けなどを考慮し、提案時とはらせんの向きを反転させた(写真:生田 将人)

〔図1〕赤いリボンを描いた第3案の表紙
赤いリボンで結ばれた2人の人生とらせん階段を重ね合わせた計画コンセプトを、シンプルに表現した。リボンや新郎新婦のスケッチは、NAP建築設計事務所の担当スタッフが描いたもの(資料:NAP建築設計事務所)
赤いリボンで結ばれた2人の人生とらせん階段を重ね合わせた計画コンセプトを、シンプルに表現した。リボンや新郎新婦のスケッチは、NAP建築設計事務所の担当スタッフが描いたもの(資料:NAP建築設計事務所)

 中村拓志氏が代表を務めるNAP建築設計事務所の設計により、2013年12月に竣工した結婚式用のチャペルだ。発注者は、造船やリゾートなどの事業を営むツネイシホールディングス(広島県福山市)。コーディネーターのフェリエ肇子氏がNAP建築設計事務所を発注者に推薦した。10年春のことだ。

 中村氏は、「僕らに対する期待感を強く感じ、背筋が伸びる思いがした。計画全体を通してポジティブな気持ちを貫けた」と振り返る。