今年6月に施行された改正公共工事品確法は、建築設計の在り方に影響を与えそうだ。公共建築でも入札方式選択の自由度が広がり、施工者の早期事業参画が加速。設計事務所が果たす役割に見直しを迫る。(日経アーキテクチュア)

 公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)が、今年6月に改正された。「多様な入札および契約の方法」として一節を新設し、工事の性格や地域の実情などに応じた発注方法を、発注者となる公共団体が選べるようになった。

 これまで公共建築は設計と施工の分離発注を原則としていた。設計事務所が基本設計と実施設計を担当し、それに基づいて発注者が予定価格を設定。入札を実施して施工者を決定するという流れだ。

 しかし、品確法の改正に伴って示された「発注関係事務の運用に関する指針」(骨子イメージ案)では、多様な契約方式の事例として、「設計段階から施工者が関与する方式(ECI方式、アーリー・コントラクター・インボルブメント)」や「詳細設計付き工事発注」、「設計・施工一括発注」、「CM(コンストラクションマネジメント)」、「事業推進PPP」といった方式が盛り込まれている。

 施工者の参加タイミングを前倒しにするこれらの発注手法は、民間の大型プロジェクトでは既に広がりつつある。公共建築でも震災復興関連事業や五輪関連施設のように、緊急性が高い事業で導入が進んできた。品確法の改正は、こうした状況を追認して後押しするものだ〔図1〕。

〔図1〕改正公共工事品確法が揺るがす設計プロセス
今までの(1)基本計画、(2)基本設計、(3)実施設計、(4)施工、という段階を踏んだプロセスから、(2)と(3)のオーバーラップが進むだろう(イラスト:ぽむ企画)
今までの(1)基本計画、(2)基本設計、(3)実施設計、(4)施工、という段階を踏んだプロセスから、(2)と(3)のオーバーラップが進むだろう(イラスト:ぽむ企画)