これからのマンション管理を考える
目次
-
15人との対談がもっと多くの人との対話に広がることを期待しながら
「これからのマンション管理を考える」というタイトルの対談シリーズが始まったのは2006年5月だった。実は、その時、タイトルの「これから」というのがどのくらいの期間をさすのか深く考えもしないままだった。結果からいえば、その「これから」は2年半に及ぶ長さになった。対談にご登場いただいた方は15人。 「こ…
-
マンションは「住むためのもの」であることを、まず考えるべき/冨田路昜氏と語る(第4回)
村井 あちこちの自治体に行ってマンション管理関係の会合に参加していますが、最近は町内会も管理組合も一緒の会合が結構増えてきているので驚いているんです。いままでのように“管理組合、管理組合”とマンションだけの独自性を強調する考え方は通じなくなってきちゃっているのかもしれませんね。だからセミナーでも“管…
-
マンションの最初から最後までをサポートできる公的機関がいまはない…/冨田路昜氏と語る(第3回)
冨田 かつてはマンションを様々な切り口から調査していました。管理に関する調査もかなり早い段階から取り組んでいました。しかし、住宅金融公庫から住宅金融支援機構へとその役割が変化するにつれ、マンションに関係する調査は少なくなりました。それにしても、公庫がマンションに関して担ってきた役割、マンション建設の…
-
管理組合でコントロールできる規模には自ずと限界がある/冨田路昜氏と語る(第2回)
冨田 管理組合でコントロールできる規模、限界はもちろんあるわけで、やみくもに大規模化や超高層化していったことに無理があったと思います。このようなマンションの管理を専門家でもない交代制の理事会が住民自治としてこなしていかなければならないことについて、事前に整理しなければならないことがたくさんあったのだ…
-
超高齢社会を見据えていたら、適正化法はもう少し違っていたかも…/冨田路昜氏と語る(第1回)
冨田 適正化法が議論されていたころは、たしかに政策的にはマンション問題にあまり手が付けられていなくて、なんとかモチベーションを上げようということで法律や指針が出来ましたが、あのときには、ここまで少子高齢化などで時代が変わってきていることは、それほど強く認識していなかったと思います。たしかに初期に建設…
-
未来永劫、区分所有を続けるという発想はそろそろ切り替えないと/米山秀隆氏と語る(第4回)
村井 そういうわけで、古くなったマンションの問題を考えている人の頭の中には、いま、建て替えと大規模改修という二つの物差しが並んでいる状態なんですね。二つの道のどちらを選ぶか、二者択一になる。こっちでなきゃダメだ、いやこっちだという、ある意味では危険なほど極端に二分した考え方があって、問題の整理があま…
-
管理組合法人みたいな団体がファンドになる手も…/米山秀隆氏と語る(第3回)
村井 単純な建て替えじゃなくて、社会資産として、その集合住宅がその地域に建ち続けながら存在意義を全うできるような管理手法を考えることで、一つの答が出てくるんじゃないかという気もしますが…。米山 私は法律の専門家ではないですが、区分所有をファンドに売るんじゃなくて、自分たちが区分所有権をもっていて、そ…
-
建て替え以外の選択肢を示し得るコーディネーターが求められる/米山秀隆氏と語る(第2回)
村井 少し話題を整理するつもりで申し上げるんですが、米山さんのご提案で一番よくわかるのは、都心3区を中心にした都心部での活用です。ファンドの登場が一つの契機になるわけですが、ファンドが具体的に興味を示しそうな条件というのは何だとお考えになりますか。米山 まず、こういう事業を行う場合には、すべての区分…
-
老朽マンションを賃貸マンションとして再生する道もある/米山秀隆氏と語る(第1回)
米山 老朽化したマンションをファンドが買い取って賃貸マンションとして再生するという内容は、たぶんだれも言ったことがないことだろうと思うんですけれども、この構想自体をいますぐ実現できるとは私も思ってはいないんです。たぶん、ファンドに売ると言っても、それはファンドに売ることについて区分所有者全員の合意が…
-
同じ担当者がずっと継続している中小管理会社にむしろ期待している/澤田博一氏と語る(第5回)
澤田 物件を担当している担当者をあまりに頻繁に代えすぎる管理会社がありますよね。……そうすると、さきほどおっしゃっていた記憶の伝承なり何なりを第三者として担保していく役割は果たせない。これはあんまりじゃないかというケースもあって…。村井 それは、確かに否定できませんね。……澤田 そういう意味では、私…
-
古いマンションでも性能をグレードアップできる工法や材料が出てきた/澤田博一氏と語る(第4回)
澤田 いまのマンションをハード側で見ると、一番新しいものとしばらく時間のたったものとでは、性能的に開いちゃっている。でも、耐震性はちょっと置きますが、ようやく標準管理規約に盛り込まれた建具とか金物類、そういうところについては、いまの平均的な水準まで何とかグレードアップしたいという要望に応えられるよう…
-
“あと何年もつか”ではなく“何年もたせたいか”でマンションの寿命が決まる/澤田博一氏と語る(第3回)
村井 ……かなり古くなったマンションが一様にぶつかり始めているのは、結局、修繕でもたせられるのはあと何年なのかという話なんですよ。残存寿命ですね。澤田 私がいまの時点で意見を言うとすれば、逆に、あと何年もたせたいと考えているかだと思いますよ。村井 確かに、そういうことでもありますね。澤田 もたせたい…
-
新築経験しかない施工会社では築30年の大規模修繕工事は務まらない/澤田博一氏と語る(第2回)
村井 どんなマンションでも、すべての居住者が工事計画をきちんと理解して協力するなんていうことはあり得ないわけで、常に一定量の“わからない”人、“知らない”人、それに情報が届いていない認識未確認ゾーンみたいな一群の人たちが残るわけですからね。これは昔から、ある程度あったと思う。ただ20年前の工事項目が…
-
大規模修繕にオールマイティーの薬はない/澤田博一氏と語る(第1回)
村井 いまは、昔と違ってセミナー全盛の時代ですから、いくらでも情報収集のチャンスはあるし、それから雑誌も少し気を付ければある程度はあるし、20年前と比べると情報が増えてきていることは間違いないと思うんですね。でも、そういう情報の影響を受けて、中途半端に聞きかじった言葉だけ覚えていながら肝心の意味がさ…
-
マンション住民にとって、耐震偽装事件の教訓とは何だったのか/細野透氏と語る(第5回)
村井 ところで、細野さんは日本経済新聞社から一昨年に「耐震偽装」という本を出されていますね。あの事件については、いまだに核心を突いた発言が少ないような気がします。そのことを考えながらお聞きするんですが、構造もわかる専門ジャーナリストの視点から見て、あの事件の本質的問題と教訓は、いったい何だったと思い…
-
空間の有効活用であっても、マンションを超高層化することには疑問がある/細野透氏と語る(第4回)
村井 土地と言うと普通は平面の二次元のことしか考えないけれど、一定量のスペースを上に伸ばして立体的な三次元でとらえるという発想なら、これは空間本位と言うことになるんでしょうね。細野 都心だけですけれどね。そうなっちゃっていいのかどうかは別にして、“世界的なビジネス都市東京のためにはそうならざるを得な…
-
建物や設備の劣化は物理的法則に従っているのだから合理的処理しかない/細野透氏と語る(第3回)
村井 同じように劣化する建物の状況を前にしてこの状態をどうするんだという場合、分譲マンションでは所有権概念がことごとに立ちはだかってくる感じがあるからです。賃貸マンションとは違う難しさが、そこに生まれてくるわけです。……細野 分譲にしろ賃貸にしろ、建物や設備の劣化は物理的法則に従っているわけですから…
-
資金力のあるマンションと庶民派マンションでは実情が異なるのでは?/細野透氏と語る(第2回)
細野 私もかつて日経BP社にいた時代に、先田(政弘)さんから“マンションは管理をきちんとしないともう使い物にならなくなって粗大ごみになるよ”という話を聞いていたんです。村井 だから、あの人は、生涯にわたって、それを言い続けたわけです。細野 それで私が思ったのは、先田さんの言われていたことは、たぶん世…
-
マンション入居者は、「大家の論理」と「店子の論理」の両立で苦しんでいる/細野透氏と語る(第1回)
村井 40階建て、50階建てのマンションの何階かに住んでいる人が、自分の住んでいる建物の全体を理解できているかと言うと、そんなことできるわけがないですからね。細野 絶対に無理ですね。村井 にもかかわらず管理の制度は、3階建て、5階建てぐらいのマンションしかなかった時代と同じ方式、同じ発想の原則を、い…
-
中古マンションの評価は管理情報も含めて次の課題/大久保恭子氏と語る(第5回)
大久保 私は、基本的な評価ポイントは中古を買う人も新築を買う人も一緒だと思うんです。例えば住環境がどうだとか利便性がどうだとか、マンション全体の建物の住み心地はどうだとかは基本的には変わらない。ただし、中古は建ってから何年という経年変化がありますので、その経年変化がどうなっているかというところをプラ…