未来の居住空間「スマートリビング」

 ロボットとの共生というと、ASIMOやPepperのような人型ロボットが空間に入ってきて単体でサービスを行うイメージがある。だが、実現可能性としては空間自体をロボット化したほうが早い。単体のロボットと知能化した空間を連携させれば、さらにきめ細かなサービスが可能になるだろう。

 政府の予測では、ロボットの活用はサービス業で非常に進むという。この分野には建築と絡むアイテムがかなりあると考えている。分野別の予測では「受付・案内」「清掃」「重作業支援」などの成長率が高い。

●2035年までのロボット産業の将来市場予測
政府は、すでに市場が形成されている製造業などの成長に加え、サービス分野など新分野へのロボットの普及によって、「2035年に9.7兆円まで市場が拡大する可能性がある」と予測している(資料:経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構)
政府は、すでに市場が形成されている製造業などの成長に加え、サービス分野など新分野へのロボットの普及によって、「2035年に9.7兆円まで市場が拡大する可能性がある」と予測している(資料:経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構)

 これを踏まえ、私の研究室では、ロボットと共生する生活空間を計画技術の側面から研究している。実験でロボットの接近限界距離を調べたところ、日本の高齢者はロボットに対して親和性が高く、動くものが近づいてきてもあまり怖がらないことが分かった。積極的にロボットを使いたいという意識調査結果も出ている。ロボットのデザインに関しては、のっぺらぼうではなく表情があったほうが親和性は高い。

 こうした基礎的な研究のほか、具体的にロボットやICTを用いて未来のスマートリビングをつくろうと、東京電機大学未来科学部の建築学科、情報メディア学科、ロボット・メカトロニクス学科で協働した。

東京電機大学未来科学部の建築学科、情報メディア学科、ロボット・メカトロニクス学科の協働による「スマートリビング・プロジェクト」(写真:建設通信新聞)
東京電機大学未来科学部の建築学科、情報メディア学科、ロボット・メカトロニクス学科の協働による「スマートリビング・プロジェクト」(写真:建設通信新聞)

 まず人が入室すると、壁面からロボットチェアが走り出て座るよう促す。実験では魚眼カメラによって位置情報を取得し、障害物を認識して回避できるようにした。またテーブル上にオブジェを置く直感的な操作で、壁面のスクリーンにさまざまな情報を映すスマートテーブルもつくった。人が退室すると、ロボットチェアは自動で壁に収納される。

 デモを見た来場者へのアンケートでは約9割の人が「面白かった」と答え、「実際に使ってみたい」という人が6割に上った。

●建築・ロボット・情報技術の融合を目指すスマートリビング