10年前倒しで水素社会を

 「大会では競技施設、選手村で一切ガソリン車を排除する」「世界的に30年が水素社会の到来と言われているが、東京は20年には実現したい」―。10月末、東京都の舛添要一知事が出張先のドイツで発言した水素社会についてのコメントが、全国紙で大きく取り上げられた。

 「東京都長期ビジョン」には、都内の燃料電池普及台数、水素ステーション整備箇所の件数、家庭用燃料電池普及台数について、目標値と年次を掲載予定だ。現在、「水素社会の実現に向けた東京戦略会議」で検討が進められている。

 国は今年6月に水素・燃料電池戦略ロードマップを公表したが、都からも積極的な推進策が出てきそうだ。

●国の水素・燃料電池戦略ロードマップ概要
図中の赤の矢印は国が重点的に関与、青の矢印は民間主体の取り組み(経済産業省の資料を日経アーキテクチュアで一部加工)
図中の赤の矢印は国が重点的に関与、青の矢印は民間主体の取り組み(経済産業省の資料を日経アーキテクチュアで一部加工)

 東京周辺の自治体も独自の動きを見せている。例えばさいたま市は9月、ホンダ、岩谷産業と共同で、パッケージ型「スマート水素ステーション」の第1号を、さいたま市東部環境センター(さいたま市見沼区)内に設置した。このステーションはホンダの独自技術を用いてコンテナサイズ程度に小型化、設置工事も基礎を除いて1日で完了できる。このパッケージをさらにコストダウンして、FCV(燃料電池電気自動車)普及のための水素供給インフラ整備の加速を目指す。

 川崎市は13年6月、千代田化工建設と水素社会実現に向けた取り組みに関する包括連携協定を締結を締結、臨海部にCO2の出ない「世界初の商用素発電所」の建設を目指す。ここで生産したエネルギーの消費地として、多摩川を挟んで隣接する東京都世田谷区と連携を進めるための協議も首長間で行われている。

 都市における環境・エネルギーを考えるうえで、「水素」の位置付けは、急速に高まってきている。