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TARGET2020 1st Stage テクノロジー・ディスカッション

集中討議「都市の安全・安心を高める」

ディスカッション Part. 2

2014/12/15

Part.1での6つのプレゼンテーションを受け、2020年を見据えた安全・安心な都市づくりの在り方と課題について議論した。「技術融合でいかにイノベーションを起こすか」「公共インフラの再定義の必要性」など、主要論点ごとにディスカッションの発言要旨を再構成してお届けする。

●参加者(敬称略・50音順) 越智英幸 セブン&アイ・ホールディングス総務部渉外副主事/影広達彦 日立製作所中央研究所知能システム研究部主任研究員/小板橋裕一 日建設計構造設計部門構造設計部長/佐藤千佳 東京都都市整備局市街地建築部耐震化推進担当部長/菅沼久忠 TTES代表取締役社長/野竹宏彰 清水建設技術研究所安全安心技術センター主任研究員/福山洋 建築研究所構造研究グループ長/前田隆 オイレス工業代表取締役副社長/藤沢久美 シンクタンク・ソフィアバンク代表/野城智也 東京大学副学長、生産技術研究所教授 ●モデレーター 安達功 日経BP社日経BPインフラ総合研究所所長(写真:栗原克己)

イノベーションを起こすには

―東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、東京をはじめとした日本の都市基盤の整備についても2020年という1つの目標が設定されたといえると思います。この目標を視野に入れながら、都市の安全・安心を高めていくには、関連技術をどのように融合し、展開させていけばよいのでしょうか。

野城(東京大学) イノベーションは、「開発→生産・実装・適用→効果評価→レビュー」という作業を繰り返すなかで、常に行きつ戻りつしながら新しい意味を加えていく取り組みから生まれてきます。新たな可能性は、技術とニーズを適切にマッチングしていくことで開かれていきます。

●イノベーション・プロセスのモデル
イノベーションのプロセスは、リニア(一直線)では進まない。多様なプレーヤーの多方面での連携が必要だ(資料:野城智也)

藤沢久美氏 ふじさわ・くみ シンクタンク・ソフィアバンク代表 国内外の投資運用会社に勤務後、1996年、日本初の投資信託評価会社を起業。2000年にシンクタンク・ソフィアバンク設立に参画。13年代表に就任(写真:栗原克己)

藤沢(シンクタンク・ソフィアバンク) 今、私は「スポーツ・文化ダボス会議」の準備に携わっています。2016年、世界から若手リーダーやアスリート、アーティストを東京に呼ぶ計画です。世界経済フォーラム(ダボス会議)のクラウス・シュワブ会長の提案を受け、下村博文・文部科学大臣が中心となって開催に向け指揮を執られています。

 今年9月に北京で開催された夏季ダボス会議でも、アーティストと都市機能を融合させた展示があったのですが、アーティストは今、新しい技術を探し求めています。都市でセンサーやモニタリングの先端技術の使い方をアーティストに考えてもらうと、面白いアイデアがいろいろ出てきそうです。また、2000人規模の参加者が予定されているので、彼らに協力してもらって街中で様々な実験ができるかもしれません。

 Part.1で話題に出てきたようなセンシングやモニタリングの技術は、その際にいろいろ活用できるのではないかと想像が膨らみました。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、訪日客に「未来の都市」を体験していただくことも大事です。その予行演習的なことが2016年に実現できればと思っています。各企業が持っている様々な先端技術や知恵を借りて、安全・安心のソリューションも含め、新しい可能性を描く場にしていきたいですね。

越智(セブン&アイHD) 商品という形でイノベーションを生み出す過程では、ユーザーが納得する理由や物語をきちんと提供することが大切です。コンビニエンスストアの商品開発は、いわばそうした物語づくりの繰り返しです。他社が100円で売っているおにぎりで、150円の商品を開発する。これを買っていただくには、そのおにぎりがなぜおいしいかという物語に納得してもらい、食べておいしいと感じてもらわなければなりません。ユーザーが判断できる材料や物語を提示する仕組みは、どの分野でも必要だと思います。

野城智也氏 やしろ・ともなり 東京大学副学長、生産技術研究所教授 1985年、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。建設省建築研究所研究員、東京大学生産技術研究所長などを経て2013年4月より現職(写真:栗原克己)

野城(東京大学) 建築・土木業界は、物語づくりがあまり上手ではありません。物差しをつくっても業界内の物差しになってしまいがちで、実際に利用するユーザー視点が弱いと感じます。

影広(日立製作所) モチベーション・マネジメントという考え方が有効ではないかと思います。例えば、構造物の老朽度合いなどの情報を計測機器などで常に収集してビルオーナーにも分かりやすく見える状況をつくる。そうすることによって、オーナーが思い描いている建物の状態と現状との差が明らかになり、改善への意欲を促すことが期待できます。

―公共建築の場合、オーナーだけでなく多くの人に状況が見えるようにするとよさそうですね。

菅沼(TTES) 私が携わっている土木構築物のセンシング分野でも、住民参加型で情報を集めて発信する仕組みをつくれば、多くの利用者のモチベーションを高められるかもしれません。より安全な街をつくるための、広域モニタリングへと発展させる可能性も感じています。

 別の観点ですが、災害時には、影広さんに先ほどご説明いただいたプラント維持管理のためのAR技術が使えるかもしれません。この技術は様々な情報と場所の情報を細かくリンクできる点が面白いですね。避難上どこの経路が危ない、建物や橋など避難経路上のどこにどんな問題があるといった情報を集約して見せることができれば、災害時に一目で把握しやすい情報として役に立つでしょう。

構成:守山久子=ライター日経アーキテクチュア

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