東京消防庁の新基準を適用

 順天堂医院のB棟は、地上21階建て、約100mの高さがあり、病棟は10階から21階の高層部にある。地震などで火災が発生した場合、いかに安全に避難させることができるか。バリアフリーの観点から、これらに必要な技術をパッケージ化した。

 順天堂では特に、理事長をはじめ病院スタッフも高齢者をどう避難させるかについて懸念していた。これに対して採用したシステムは、まず(1)入院患者は安心して一時避難エリア(非火災ブロック)に移動でき、(2)病院スタッフは避難誘導に専念できる、(3)消防隊は2方向からの消火や避難誘導ができるのに加えて、(4)垂直避難・搬送ができるという4つのメリットがある。

 避難行動の原則は、まず水平移動だ。防火区画した非火災ブロックに移動する。移動のために通る廊下には、煙を排出するための加圧防排煙設備を設置して、一時避難エリアとなる非火災ブロックには、外部から新鮮な空気を取り入れる。その間には、煙を遮る扉を設置した。いずれの方向からも押すだけで通ることのできるものだ。

 そのうえで、非常用エレベーターを利用して垂直方向に避難をするようにした。このときに自衛消防隊が非常用エレベーターを利用して避難誘導できる。

 B棟での非常用エレベーターの避難誘導使用は、東京消防庁が13年10月に制定した指導基準「高層建築物における歩行困難者等に係る避難安全対策」に基づく措置としての認可第1号となった。

●高層病棟の火災時避難安全システム
災害時の火災からの避難をパッケージ化した安全システムの概念図。順天堂医院で初採用した。水平移動したうえで、避難誘導用エレベータを利用して建物外に向かう(写真・資料:清水建設)
災害時の火災からの避難をパッケージ化した安全システムの概念図。順天堂医院で初採用した。水平移動したうえで、避難誘導用エレベータを利用して建物外に向かう(写真・資料:清水建設)