東京の下町をのんびりと走る都電荒川線が慌しくなってきた。併走する都市計画道路の整備に合わせて、軌道やホームを移設する大規模な工事が始まっている。(編集部)

 東京に現存する唯一の都電「荒川線」。荒川区の三ノ輪橋と新宿区の早稲田を結ぶこの軌道に重機が入った。都市計画道路を整備するため、荒川区や豊島区の2区間で道路と軌道の一体的な工事が進んでいる。起点の三ノ輪橋から新旧の電車に乗り、線路沿いを歩き、変わり始めた沿線風景を見ていく。

 三ノ輪橋の停留場を出た荒川線電車は、京成線と立体交差する町屋駅前付近まで専用軌道を走るものの、その先は線路の両脇に車道が並ぶ。これが整備中の都市計画道路補助第90号線(補助線街路)だ。補助90号は荒川区荒川一丁目と北区堀船三丁目を結ぶ4.3kmの都市計画道路で、並走区間には「都電通り」という愛称が付いている。

 都電通りの町屋二丁目と小台(西尾久三丁目)の間約2kmでは、都の無電柱化事業が進められている。現在は歩道側に電柱が並び、線路に門型架線柱が立っているが、同事業が完了すれば頭上の空間がすっきりし、電車からの車窓も変わるはずだ。

 加えて、都は都電通りの町屋一丁目と荒川一丁の間約1200mを「木密地域不燃化10年プロジェクト」の特定整備路線のひとつに指定。震災時などに市街地の延焼を遮断したり、木密地域の防災性や耐火率の向上を図ったりしている。

三ノ輪橋(荒川区)の停留場を出発した荒川車庫前行き9000形(左)と降車専用ホームに停車する7000形。降車した人たちをピンクのバラが迎える(写真:大野 雅人)
三ノ輪橋(荒川区)の停留場を出発した荒川車庫前行き9000形(左)と降車専用ホームに停車する7000形。降車した人たちをピンクのバラが迎える(写真:大野 雅人)

三ノ輪橋東側の日光街道(国道4号)沿いに建つ梅沢写真会館。都電荒川線のルーツである王子電気軌道時代に本社ビルとして使われていた(写真:大野 雅人)
三ノ輪橋東側の日光街道(国道4号)沿いに建つ梅沢写真会館。都電荒川線のルーツである王子電気軌道時代に本社ビルとして使われていた(写真:大野 雅人)

荒川区役所停留場から王子方面を見る。線路沿いには、昔ながらの住居が並ぶなかに、新築中の戸建て住宅も見える。この区間には線路に沿った車道はなく、幅1mほどの歩道が所々にあるのみ(写真:大野 雅人)
荒川区役所停留場から王子方面を見る。線路沿いには、昔ながらの住居が並ぶなかに、新築中の戸建て住宅も見える。この区間には線路に沿った車道はなく、幅1mほどの歩道が所々にあるのみ(写真:大野 雅人)

京成線町屋駅ホームから都電荒川線町屋駅前を見下ろす。ホームの南側に片渡り分岐があるのが分かる。折り返し運転に使用している。都電の軌間は1372mm、京成は1435mm。京成は過去、都電に乗り入れる構想があり、1372mmの路線を保有していた時代もあった(写真:大野 雅人)
京成線町屋駅ホームから都電荒川線町屋駅前を見下ろす。ホームの南側に片渡り分岐があるのが分かる。折り返し運転に使用している。都電の軌間は1372mm、京成は1435mm。京成は過去、都電に乗り入れる構想があり、1372mmの路線を保有していた時代もあった(写真:大野 雅人)

センターポール(中央1本出し)タイプの架線柱が設置してある宮ノ前付近。道路の中央を軌道にして車道と分離したセンターリザベーションの区間だ(写真:大野 雅人)
センターポール(中央1本出し)タイプの架線柱が設置してある宮ノ前付近。道路の中央を軌道にして車道と分離したセンターリザベーションの区間だ(写真:大野 雅人)

熊野前から宮ノ前を望む。センターリザベーションや、線路と直交する横断歩道、アスファルト敷きやバラスト敷きの軌道などが見える(写真:大野 雅人)
熊野前から宮ノ前を望む。センターリザベーションや、線路と直交する横断歩道、アスファルト敷きやバラスト敷きの軌道などが見える(写真:大野 雅人)

都電荒川線の路線イメージ。荒川線はJR線や地下鉄、新交通システムなど多くの鉄道と交差している(写真:大野 雅人)
都電荒川線の路線イメージ。荒川線はJR線や地下鉄、新交通システムなど多くの鉄道と交差している(写真:大野 雅人)

荒川区内の都市計画道路整備状況。赤色が整備済み、黄色が事業中、青色が未整備(優先整備)、緑色が未整備(時期未定)。都電荒川線はほぼ補助90号(図の補90)に沿って走っている(資料:荒川区)
荒川区内の都市計画道路整備状況。赤色が整備済み、黄色が事業中、青色が未整備(優先整備)、緑色が未整備(時期未定)。都電荒川線はほぼ補助90号(図の補90)に沿って走っている(資料:荒川区)