壁の向こう側で進む大工事

 南砂町駅の改良工事を行う区間の延長は約440m。工事は中野寄りから始端部(76m)、中央部(192m)、終端部(169m)の3工区に分かれている。施工者は、始端部が熊谷組、中央部が大成建設・竹中土木JV(建設共同企業体)、終端部が大林組・前田建設工業・西武建設JV。工事は2013年8月に着手した。工事費の総額は約340億円。

南砂町駅の工事現場。現在は杭打ちの準備工事を行っているという(写真:小佐野カゲトシ)
南砂町駅の工事現場。現在は杭打ちの準備工事を行っているという(写真:小佐野カゲトシ)

工事区間の延長は440m。以前は駐車場や公園だった場所だ(写真:小佐野カゲトシ)
工事区間の延長は440m。以前は駐車場や公園だった場所だ(写真:小佐野カゲトシ)

 工事は既存の躯体の外側を包み込むように新たな躯体を建設したうえで既存の壁などを撤去し、空間を広げるイメージだ。

 まず既存の駅トンネルの両側に、土留めと新たな躯体の本体利用を兼ねた地下連続壁を造る。壁が完成すると、内側を掘削して新設するホームや線路、コンコースのスペースを造っていくが、駅周辺は地盤が軟弱なため、掘削の前に既存の駅部分の下も含めた地盤改良を施す。

南砂町駅改良工事のイメージ。既存の駅の躯体の外側に新たな躯体を造り、空間を広げてホームと線路を増設する(東京メトロの資料を基に小佐野カゲトシが作成)
南砂町駅改良工事のイメージ。既存の駅の躯体の外側に新たな躯体を造り、空間を広げてホームと線路を増設する(東京メトロの資料を基に小佐野カゲトシが作成)

 地盤改良は、地下に差し込んだパイプからセメントを超高圧で噴射し、回転させて周りの土とかき混ぜる「高圧噴射撹拌(かくはん)工法」を採用。既存の躯体の下もこの工法で地盤改良するが、駅の下には地上から直接パイプを差し込むことができないため、軌道部分に小さな穴を開けて施工するという。