施工CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)を導入して約2年がたつ大林組。当初、土木施工で3Dモデル導入するメリットは小さいと考えられていたが、現在では毎週のように、現場から施工CIM活用の要望が届くという。同社のCIM導入までの経緯とその実例を紹介する。(日経コンストラクション)

杉浦 伸哉氏(写真:菊池 くらげ)
杉浦 伸哉氏(写真:菊池 くらげ)

「何ができるか」ではなく「何を解決するか」

 建築設計でのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は、設計・構造・意匠の考えを一つのモデルに反映させるコラボレーションツールとして、様々な効果を上げていた。しかし、土木は分離発注が基本なので、建築設計のようなメリットは期待できない。

 土木施工で3Dモデルは「何ができるのか」。私たちはまず、3Dを施工検討に役立つツールと捉え、現場にCIMを持ち込んだが、それを有効とみる現場は少なかった。本社や研究所と現場とでは考えが違う。そこで視点を「何をしなければいけないのか」に移し、現場で困っていることは何か、それは3Dで解決できる問題なのかについて、徹底的にヒアリングした。

 実際に現場の声を聞くと、3Dモデルが有効なケースも散見された。まずはその必要な場面だけに活用しようと考えた。その結果、施工検討に特化したツールとして当社の施工CIMはスタートした。

 ポイントは3つ。(1)手戻りをなくすこと、(2)判断の迅速化、(3)施工コストの縮減。この3点の問題解決と、加えて、社会資本の担い手として、公共構造物の維持管理の初期モデルを施工CIMのシステム内に構築するという目標を、本社と現場の合意で定めた。