東日本大震災では私有財産に関する安全性のレベルの低さが目立った。対策技術も技術基準も持ちながらこのような結果を招いた理由の一端は、社会システムの不備にある。その改善を検討するための材料を提供する。(日経アーキテクチュア)

日下部 治氏(写真:後藤 光一)
日下部 治氏(写真:後藤 光一)

対策技術がありながら防げなかった問題の是正を

 自然災害に対する社会としての脆弱性の評価、東日本大震災からの教訓、社会システムの改善、といった3つの話題を提供したい。

 まず自然災害を国際社会がどう扱っているかを紹介する。自然災害に関わる減災対応や発災時における多国籍の救助・救援については、全世界レベルでの多国間連携が政策目標とみなされている。これは、国連が掲げる「貧困・飢餓の根絶」「環境持続性の確保」というミレニアム開発目標と密接に関連する。

 ポイントは、自然災害の減災には、堤防築造や高台移転など自然科学・工学的な対応だけでなく、社会経済的側面を含めた総合的なアプローチが欠かせないという点だ。