都市機能分散も必要

 東京への一極集中は無視できないところまで来ている。衛星軌道上から撮影した地球の夜の写真を見ても、東京近郊は異質なほど明るい。それだけ人口や機能が集積している。都市の構造を考える視点も必要だ。都市の営みが、そもそも全国の自然に支えられていることが忘れられていないだろうか。

 次の大震災がいつか起こると考えれば、都市機能を他の地域に分散しておくことも必要だ〔図3〕。現状は、いつ壊れるか分からないたるの中に、人々と日々の活動などの中身が詰まっている状態だろう。たるを補強しつつ、いかに分散を促すかという点も課題となっている。

〔図3〕一極集中の「高さ」を抑える
災害時の都市の耐久性を考えると、都市の高さ(人口)を抑制し、他の都市へ分散を図る必要もある(資料:和田 章・東京工業大学名誉教授)
災害時の都市の耐久性を考えると、都市の高さ(人口)を抑制し、他の都市へ分散を図る必要もある(資料:和田 章・東京工業大学名誉教授)

 耐震工学、構造工学は常に過去の痛手から学んできた。東日本大震災の被災地では、防潮堤を設け、宅地をかさ上げして、その上に昔ながらに低層の木造住宅を建てようとしている。この遅い復興は、景観だけでなく、海と陸地の自然循環を壊して進められ、大きな遺恨が残るに違いない。知恵を働かせ、防潮堤の高さは程々にして、津波に備えて浜に建てる住宅を高層化する答えもある。国全体で災害へ備えていく姿勢が欠かせない。