制振装置が不安も軽減

 森タワーは、制振装置にオイルダンパーなど粘性系のものを多用している。粘性系は風による揺れや中小地震、そして大地震まで、効果が得られる揺れのレンジが広い。私たちは発注者として、日常的に揺れないことが結果として利用者の安心感、信頼感を醸成すると考えている。

 私自身、2011年3月11日の本震の際は森タワーの10階にいた。すぐ今までの地震とはまるで違うな、と直感した。建物は5.4秒周期という非常にゆっくりした周期で揺れ、大きな船の中にいるような感じを受けた。天井や仕上げがきしんで、ピシッピシッという音がした。そしてそれが、いつまでも続いた。

 森タワーでは揺れた直後に「建物内にとどまってください」とアナウンスをしており、パニック行動が起こることはなかったが、利用者に不安感がなかったわけではない。森タワー頂部のレストラン来客者の中には、揺れの継続時間が長かったため不安を覚える人もいた。建築の構造計画をよくご存じの方でない限り、「大丈夫なのか」と考える方が自然だろう。