設備容量の設計が過大

 この2つのツールでチェックしたデータをもとに、ビルごとに最適な環境性能を打ち出せるように設備のチューニングサポートを実施。ビルの稼働後1年間、設計性能を確保しているか、設計自体が妥当なものだったかを確認し、検証する総合性能確認も実施することをルール化した。

 こうした取り組みの結果から、設備容量の適正化の重要性が明らかになった。例えば、熱源機器の容量の設計値とピーク時の実績値を比較すると、中央熱源のビルでは約26%、個別熱源のビルは約43%の開きがあった。テナントの業態によっても電力消費量には、50kWh/m2年以下から500kWh/m2年以上まで10倍以上の差があった〔図2〕。テナントが決まっていない設計段階では安全をみて設備が過大になり、運転効率が低下するのだ。

〔図2〕テナントの電力使用量の実測値
テナントの業態によって電力使用量が異なることが判明した。テナントによっては10倍以上の差があった(資料:三井不動産アーキテクチュラル・エンジニアリング)
テナントの業態によって電力使用量が異なることが判明した。テナントによっては10倍以上の差があった(資料:三井不動産アーキテクチュラル・エンジニアリング)

 設計時に想定したエネルギー消費量のピーク時は、実際と大きく異なった。設計者は、外気温が高く日射負荷の大きい夏季の午後1時から午後4時ごろまでを、エネルギー消費量のピークと考えていた。

 実際のピークは夏季の週明けの月曜日午前8時だった。冷房を利かせない週末に温まったビルを一斉に冷房するからだ。もし30分でも早く空調の運転を開始すれば、エネルギー消費量のピーク値を下げられる。

 当社では中央熱源の新築ビルは設備容量を約20%、個別熱源の新築ビルでは約40%下げた。設備機器のイニシャルコスト削減と空調効率の向上を実現。現時点では容量不足という事態は発生していない。

 過大と思われる設備はダウンサイジングして、設備容量を適正化すれば、設備のイニシャルコストを削減できる。エネルギー消費を効率化し、ランニングコストも減らせる。実測データに基づいて、ビルの環境性能を評価し、運営に反映する手法は効果的だと考えている。