大林組は3月6日、建物を建て替えるとき既存の杭を新築建物の杭として再利用するために健全性を定量評価する方法を開発し、日本建築センターの一般評定を取得したと発表した。新たに考案した2つの損傷度指標の分布図上に、評価したい既存杭の弾性波探査の結果をプロットすれば健全性が分かる。

 同社によれば、杭の健全性の評価方法が日本建築センターの一般評定を取得したのは初めて。場所打ちコンクリート杭や鋼管杭などほとんどの杭形式に適用できるという。

 以下は発表資料。


地中にある既存杭の健全性を定量的に評価する方法を開発

健全性評価法として初めて日本建築センターの一般評定を取得

 株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、建物の建て替え時、地中にある既存杭を新築建物の基礎として再利用する際に行う健全性評価を、定量的に行う方法を開発し、一般財団法人日本建築センターの一般評定を取得しました。

 近年、都心部では、新築建物における建て替えの割合が、非常に大きくなっています。東京の都心3区(千代田区、中央区、港区)では、今後5年間に新築される大規模オフィスビルの62%が建て替えとなるとの調査結果もあります(森ビル株式会社 「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査」2013年調べ)。

 杭基礎建物を建て替える場合、既存杭を再利用することができれば、「新設する杭を減らすことで工期やコストを縮減する」、「資源のリサイクルおよび廃材の削減によって環境負荷を低減する」などのメリットが得られます。再利用するためには、既存杭の健全性の確認が不可欠です。現在、健全性の確認には、主に、杭頭部を軽打し、発生する弾性波の反射性状を測定する非破壊試験(以下、弾性波探査)が用いられています。この方法では、得られる波形から損傷の有無や位置は推定できますが、経験に基づく高度な判断が必要であり、評価結果が個人の技量に左右されるとともに、健全性を定量的に評価するのは困難な状況でした。

 今回一般評定を取得した評価法は、多数の杭の計測データを基に考案した損傷度評価の指標を用いることで、弾性波探査の結果から、健全性の程度(ひび割れの大きさ)を簡単・迅速かつ合理的に定量評価できるようにしたものです。これにより、設計業務にかかる時間を短縮するとともに、過剰に安全側に立った設計を避けることができ、より既存杭を活用しやすくなります。

 本評価法の主な特長は、以下のとおりです。

  • 既存杭の健全性を定量的に評価
    既存杭の損傷の程度を定量的に評価できる2つの損傷度指標を新たに考案しました。過去の実測データから求めた2つの損傷度指標の分布図に、評価したい弾性波探査の結果を座標で示すことで、損傷の程度をより正確に定量的に評価できます。本評価法は他に類を見ない画期的な手法です。

  • 高い信頼性
    損傷度指標は、これまでに健全性の程度を確認した多数の杭の、弾性波探査の実測データにより妥当性を確認しています。杭の健全性の評価法として、わが国で初めて日本建築センターの一般評定を取得しました。

  • 主な杭形式に対応
    場所打ちRC杭、PHC杭(Prestressed High strength Concrete pile)、鋼管杭の評価が可能であり、杭基礎を用いた建物の大部分に適用できます。

 今後、大林組は、この評価法の活用により既存杭の利用を推進することで、安全性を確保し、工期短縮やコスト低減を図るとともに、環境負荷の低減によって社会への貢献をめざしていきます。

既存杭健全性評価図

弾性波探査により得られる波形

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