日経BP社は2013年11月、東京・港区の会場で「プロジェクト エコー・シティ勉強会」を開催した。オリンピックとパラリンピックの招致が実現し、開催年である2020年そして、その先をしっかり見据えた東京の都市づくりや、国土づくりが今また改めて重大なテーマとなっている。勉強会では、開催自治体である東京都や、中央官庁のほか、都市づくりに関わる様々な専門家が、立場を超えて意見を交換した。その模様をリポートする。
1.オリンピックとパラリンピック開催の2020年に向けて
東京の都市づくりをどのような視点で進めるか。
──2013年9月のIOC総会で、東京が2020年の夏季五輪開催地に選ばれました。東京のハード面はどう評価されたのでしょうか。また今後、ハードの整備はどう進むのでしょうか。
福田(東京都) 東京が示したプランの強みの1つは、コンパクトな会場配置です。晴海のオリンピックビレッジから8キロ圏内にほとんどの施設が入り、選手や関係者、観客の移動の負担が小さい点が評価されました。コンパクトな計画は環境負荷の低減にも結び付きます。もう1つは、前回の五輪開催時から半世紀にわたって着々と整備してきたインフラの強さです。
一方で、五輪開催を機に考えていかなければならない要素もあります。
1つ目は、国際的なおもてなし。国際的な観光施策の充実、多言語での対応やユニバーサルデザインなどです。2つ目は、既存のインフラに対する安全、安心面での検証と充実。例えば、前回の東京五輪に合わせて整備した首都高速道路は、50年を経て大規模な更新時期を迎えています。3つ目は、五輪の先を見据えた都市づくりの展望です。30年、50年先を見通したうえで、2020年の五輪までにすべきことを選択していく必要があります。
岸井(日本大学) 東京にとって国際競争力の強化は重大な課題です。東京にあるアジアの拠点は、だいぶ減ってしまっています。アジアが今後ますます成長し、スポーツや文化、健康に対する関心が高まっていくなかで、五輪は、東京が何をできるのかを改めて発信するよい機会になるでしょう。
花岡(国土交通省) パラリンピックの存在も大きな意味を持ちます。障がい者に配慮するバリアフリー化はもちろん、ICT(情報通信技術)も使いながら、高齢者や外国人がストレスを感じずに移動できる環境を整える。段差解消などだけでなく、案内の問題も含めたストレスフリーが求められます。日本全体で実現するのは2050年だとしても、五輪の会場周辺では2020年を目指す必要があります。
中村(総務省) ICT面でいえば、最近のM2M(マシン・トゥ・マシン)やIoT(インターネット・オブ・シングス)といった動きが産業革命、インターネット革命に続く「第3の革命」と言われています。キーワードになるのが、ビッグデータです。
個々のユーザーの行動を把握し、最適な商品やサービスを提供する。あるいは外国人が自分の居場所を瞬時に把握できるようにして、災害などの非常時には多言語で避難経路を伝える。センサー、ビッグデータ分析の技術を使い、日本ならではのきめ細いサービスを提供する五輪になればと思います。
──五輪までに重点的に取り組むべき対象は何でしょうか。
児玉(竹中工務店) 2013年は10月までに、前年の1年分に相当する観光客が来日しました。さらなる発展を見据えると、やはり羽田空港の問題にぶつかります。また都心部には、意外とバスの拠点がない。訪問者が増えてくると、こうした移動手段へのニーズも高まるでしょうから、バスをうまく利用し、都内の拠点を回遊できるようにする仕組みづくりも必要です。
情報系では、スマートフォンなどを使い、拠点ごとに、より情報を取りやすくしていくことが望まれます。