ライオンは12月9日、浴室のカビの生育について研究した結果、冬場はカビの色が薄いので認識しにくいが、梅雨時期と同じ程度生えていることが分かったと発表した。同社は研究結果を踏まえ、冬場も梅雨時期と同様のカビ対策が必要だと訴える。

 以下は発表資料。


梅雨時期に気になる浴室のカビ
冬場も目には見えにくいがカビは生えている!

 ライオン株式会社(代表取締役社長・濱 逸夫)リビングケア研究所は、生活者が不快に感じている住まいの汚れのひとつであるカビについての研究を進めています。この度は、季節による浴室のカビの生育について研究を行ったところ、冬場はカビの色が薄いため認識しにくいものの、梅雨時期と同じ程度生えていることがわかりました。

 このことより、一般に「冬場は温度も湿度も低いのでカビは生えにくい」と思われているものの、実際には、浴室では目に見えにくいカビが生えており、季節にかかわらずカビ対策が必要であることが示唆されました。

■研究の経緯

 浴室のカビを不快に思う生活者は多く、95%の生活者は「見た目の汚さ」等に嫌悪感を抱いており、88%の生活者は健康への影響を不安に感じています(当社調べ)。当社リビングケア研究所は、こうした不快なカビを予防する技術の研究を進めるなかで、2012年には、浴室の黒カビの発生原因が天井付近に潜んでいる原因菌であることをつきとめました。

 一般に、黒カビの増殖に適した条件は、「温度(約20~28℃)」、「湿度(85%以上)」、「栄養」と言われており、温度、湿度が共に上がる梅雨時期は、1年のうちで最もカビが気になる季節といえます。しかしながら、浴室では入浴により温度や湿度が上がることや、住宅の高気密化や断熱性の向上により、温度・湿度の季節による差は小さくなっていると考えられます。

 そこで1年を通して、徹底的に浴室のカビの発生を抑えるため、季節による浴室のカビの生育について研究を進めてきました。

■黒カビの増殖に適した高湿度になっている時間は、冬場も梅雨時期と同程度!

 季節による浴室の温度・湿度の違いを調べるため、首都圏の6家庭の浴室に温度計と湿度計を設置し、梅雨時期と冬場のそれぞれ1ヵ月間の温度と湿度を計測※1しました。

 その結果、梅雨時期の浴室内の平均温度は28℃であるのに対し、冬場の浴室内の平均温度は16℃にとどまることがわかりました(図1)。一方、湿度については、梅雨時期も冬場も黒カビの増殖に適した高湿度(85%以上)になっている時間は、1日のうちで同程度であることがわかりました(図2)。

 これらの結果より、冬場の浴室は梅雨時期と比べ、温度は低くても湿度の高い時間は同様にあり、黒カビが発生するリスクはあると考えられます。

※1 梅雨時期:2007年6月19~7月16日、冬場:2007年12月22日~2008年1月18日の間、6家庭(2~4人家族)の浴室に温度計と湿度計を設置し、5分毎に温度と湿度を計測。

図1:浴室内の室温(1ヵ月間の平均)
図1:浴室内の室温(1ヵ月間の平均)
図2:    1日のうち浴室の湿度が85%以上になっている時間の平均
図2: 1日のうち浴室の湿度が85%以上になっている時間の平均

■見えにくいため気付かないが、冬場にも梅雨時期と同じ程度のカビが生えている

 次に、首都圏の、梅雨時期と冬場の浴室環境を再現した条件で、黒カビの生育状況を比較しました。その結果、梅雨時期の条件で生えたカビは、はっきりと黒く認識できるのに対し、冬場の条件では、色が薄く、認識しにくいことがわかりました(図3)。一方、生えたカビの大きさ※2を比較したところ、季節条件の違いによる差は小さく(図3)、菌数※3も差がないことを確認しました(図4)。すなわち、どちらの季節条件でも同じ程度、カビが生育していることがわかりました。

 そこで、家庭の浴室に生えているカビの実態を把握するため、冬場の浴室におけるカビの発生状況を調べました※4。首都圏の家庭を対象に調べたところ、カビが検出された所のうち、生えていると生活者が認識できた所は、全体のわずか1割でした。同様の調査を梅雨時期に行ったところ、カビが検出された所のうち、生えていると生活者が認識できた所は、全体の8割以上に及びました。

 以上の結果より、家庭の浴室では、冬場のカビは色が薄く認識しにくいため見逃されがちですが、冬場も梅雨時期と同様にカビが生えているため、梅雨時期と同様のカビ対策が必要であると考えられます。

※2 黒カビの一種であるCladosporium cladosporioidesHMC1064を、浴室汚れを添加した寒天培地に植え、梅雨時期(温度25℃)、冬場(温度16℃)を想定した浴室条件で培養後、カビの大きさを計測。

※3 100 CFU/mLに調整したCladosporium cladosporioidesHMC1064の胞子液を試験板にのせ、梅雨時期(温度25℃)、冬場(温度16℃)を想定した浴室条件で10日間培養したのち、寒天培地に塗布して生菌数を測定。

※4 冬場は、1家庭につき3ヵ所(浴室の壁2ヵ所、床1ヵ所)、10家庭(2~5人家族)計30ヵ所を、梅雨時期は、1家庭につき2ヵ所(浴室の壁1ヵ所、床1ヵ所)、21家庭(2~4人家族)計42ヵ所を対象とし、いずれもカビ取り掃除2ヵ月後に調査(2011年6~12月)。

図3:各条件で培養10日後のカビの外観
図3:各条件で培養10日後のカビの外観

図4:各条件で培養10日後の生菌数
図4:各条件で培養10日後の生菌数

以 上

この研究成果に関連する内容は、『日本防菌防黴学会 第40回年次大会』で発表しました。

【日本防菌防黴学会 第40回年次大会】発表概要

◎ 開催日

 

2013年9月10日-11日

◎ 会場

 

千里ライフサイエンスセンター

◎ 演題

 

浴室内の温度湿度変動の実態とカビの生育に及ぼす影響

◎ 発表者

 

山岸弘1)、渡部美香1)、長谷川貴通1)、田中孝祐1)、李憲俊2)

1) ライオン株式会社 リビングケア研究所

2) 株式会社衛生微生物研究センター

・ライオンのプレスリリースはこちら