2010年代から急進展、活動は新たな局面に

左から1166バックパッカーズの飯室織絵氏、マイルーム代表取締役の倉石智典氏、広瀬毅|建築設計室の広瀬毅氏、ナノグラフィカの増澤珠美氏、箱山ふとん店取締役の箱山正一氏(写真:日経アーキテクチュア)
左から1166バックパッカーズの飯室織絵氏、マイルーム代表取締役の倉石智典氏、広瀬毅|建築設計室の広瀬毅氏、ナノグラフィカの増澤珠美氏、箱山ふとん店取締役の箱山正一氏(写真:日経アーキテクチュア)

 長野市、善光寺界隈の門前町が近年、リノベーションによって生まれ変わった建物の集積地として知られるようになっている。行政や不動産オーナーが主導したものではなく、特に2000年代まではお互いの存在もよく知らないまま、蔵、古民家などの遊休不動産に魅力を見いだした小規模の事業者(テナント)が個々に始めた取り組みだった。

 2009年開設の「カネマツ(KANEMATSU)」は、現在のキーマンが共同するきっかけになったプロジェクトだ。農業用ビニールシートの加工場跡地(蔵)を活用して、カフェや古書店、シェアオフィスの入る拠点施設をつくった。早くから市内でリノベーションに関わってきた建築家の広瀬毅氏や宮本圭氏などがLLP(有限責任事業組合)「ボンクラ」を設立して運営に携わり、空き家仲介・リノベーションを業務とするマイルーム(本社・長野市)を創業した倉石智典氏もここに入居した。

 門前町にある新旧のリノベーション事例を案内する「古き良き未来地図」には、最初の発行時の2012年に30件が紹介されている。それが15年の改訂版では59件になった。この前後の進展には、03年に古民家を使って活動開始していた編集企画室・ナノグラフィカによる「空き家見学会」(09年開始)、それに合流した前出・倉石氏による丹念な空き家仲介の取り組みが特に貢献してきた。