2 環境・エネルギーから考える持続可能な都市づくりとは?

奥地 誠氏/奥地建産 代表取締役社長。太陽光発電システムを基礎から支える技術開発型の企業を率いる(写真=都築雅人)
奥地 誠氏/奥地建産 代表取締役社長。太陽光発電システムを基礎から支える技術開発型の企業を率いる(写真=都築雅人)
金谷年展氏/東京工業大学 ソリューション研究機構 特任教授。国の「ナショナル・レジリエンス懇談会」などの委員を歴任する(写真=都築雅人)
金谷年展氏/東京工業大学 ソリューション研究機構 特任教授。国の「ナショナル・レジリエンス懇談会」などの委員を歴任する(写真=都築雅人)

奥地(奥地建産) 日本の建物では単層ガラスが主流だった十数年前に、ドイツやイタリアを訪れたとき、既に二重サッシやペアガラスが一般的でした。韓国のマンションなどでもほとんどがペアガラスになっていました。先進的な取り組みの背後には、政治や行政による主導があったと聞きます。

 日本では現在、再生可能エネルギーに対して国が固定価格買取制度(FIT)を設けていますが、導入率はまだ低いのが実情です。太陽光発電も北海道と九州に生産地が集まり、電力消費の中心となる東京、関西、中部では相対的に設置が進んでいません。行政には、エネルギーの地産地消ができる街づくりを促す政策を期待しています。

金谷(東京工業大学) 持続可能な都市を考える際、レジリエンスと防災という考え方が出てきます。

 2つの違いは何か。災害発生時のために何らかの備えを持つのが防災です。一方、レジリエンスは、平時に強靭な体質をつくり上げ、いざというときにも被害を最小に抑える考え方です。いつ使うか分からない非常用電源を装備するのではなく、平時からコージェネなどリダンダンシー(冗長性)を持つネットワークをつくり、非常時にもきちんと使えるようするわけです。

 分散型エネルギーシステムも、こうした強靱性を持たせる方法の1つです。ただし、コージェネにせよバイオマスにせよ、採算の合うエネルギー事業には限りがあります。そこで、送電線のようなインフラは国や自治体の補助を入れて敷設する。そうすれば、その上に載せる事業は採算性を確保しやすくなり、民間も投資しやすくなります。

 2016年4月の電力小売り全面自由化に向け、こうしたインフラを地方自治体が準備していけば、地域にお金が回り、地域資源の活用にも結び付くという一石何鳥になり得ます。エネルギーの地産地消は、地方創生につながる今後の主要なソリューションになると思います。

――持続可能な都市づくりに向け、環境・エネルギー面の課題は何でしょうか。

小泉雅生氏/首都大学東京大学院 教授、建築家(小泉アトリエ)。環境配慮型の建築設計、デザインの実践を行っている(写真=都築雅人)
小泉雅生氏/首都大学東京大学院 教授、建築家(小泉アトリエ)。環境配慮型の建築設計、デザインの実践を行っている(写真=都築雅人)
那須原和良氏/清水建設 ecoBCP事業推進室 室長。大手の総合建設会社の立場から、強く、しなやかで人と環境に優しいまちづくりを推進する(写真=都築雅人)
那須原和良氏/清水建設 ecoBCP事業推進室 室長。大手の総合建設会社の立場から、強く、しなやかで人と環境に優しいまちづくりを推進する(写真=都築雅人)

信時(横浜市) 横浜市では創エネ、省エネ、マネジメントを3本柱に据えて事業に取り組んでいます。特に重視しているのがマネジメントで、この5年間、経産省の予算を得て実証実験を進めてきました。今後は、これらをいかにパッケージ化して次のステージに上げていくかが最大の課題です。

小泉(小泉アトリエ) スマートシティというと、おそらく一般市民の多くはモビリティーがどうなるのかを考えるのではないでしょうか。しかし、それに対する具体的な像を我々はまだあまり示せていないように感じます。

 住宅における省エネの取り組みと比較し、都市内の移動に関わるエネルギー消費はどういうボリュームになるのか。そんな基本的なところからの議論がもっと必要だと思います。

那須原(清水建設) 一方の課題として、既存ストックにおける環境配慮があります。これについては、建築確認申請の扱いを変えることで街の再生を誘導できるのではないでしょうか。

 建築確認における環境面での審査項目はだいぶ増えてきましたが、その建物が街に対してどう貢献するかのチェックはありません。例えば、100kWの非常用発電機を必要とする建物に150kWを装備することに対し、何らかのインセンティブを用意する方法もあるでしょう。建築確認にそんな機能が加われば、状況が少し動き始めるのではないかと感じます。