多種多様なエリアマネジメントを支援する

 いずれエリアマネジメントの支援制度を創設できないかと、全国の事例を勉強しているところだが、「これは大変だな」というのが率直な思いだ。エリアマネジメントはあまりにも多種多様で、雑多すぎると感じている。これまでのように、一定の型にはめて制度化するような手法には、おそらくなじまない。

 先日は、北九州市における街づくりについて関係者にヒアリングした。商店街を中心とした地元の人たちが中心市街地活性化に取り組み、古い商店などをリモデルしたうえで、やる気のある人に貸し出している。中心市街地のエリアはそれほど広くはなく、1つずつの物件も小さいが、国の補助金などは受けずに、空間を貸し出して収益を上げ、街づくりのためにうまく回している。自立的な取り組みで、魅力を感じた。

 彼らにヒアリングしたときに出てきた要望の1つが、「検査済み証のない建物でも、簡単に改修できるようにしてほしい」ということだった。古い建物の場合、建築確認を取得していても検査済み証を残していないケースが多いからだ。そうした個別の要望については、国側でも柔軟に対応できそうな部分だと考えている。

 エリアマネジメントの支援については、各地域におけるこうした具体的な取り組みの中で困っている事項をこまめに拾い上げ、特区制度なども活用しながら対応していきたい。

 また、各地域のエリアマネジメントに目を向けるときに、規制でがんじがらめにしてしまうような方向にはしたくない。

 都市局に来る前に、道路局の大臣官房審議官として「道の駅」の施策を担当したことがある。道路局では、道の駅を認定しているだけで、ほかに何かの縛りを設けたりはしていない。駐車場やトイレ、道路の情報板は国交省の補助金で整備するが、物販・飲食施設は市町村の単独事業や農水省の補助事業などでつくっている。我々の側は道の駅という概念を、ぽんと出し、あとはおのおのでやってください、と言っているだけだった。

 その結果、市町村が頑張って各地に魅力的な「道の駅」が誕生し、今ではガイドブックまで現れている。そこでは国が、「補助金を出すけれども口も出す」といったことをしなかったわけだが、長いスパンで見ればそのほうがうまく運ぶのではないか。地域づくりとは、本来、そうしたものなのかもしれないと考えている。

 一方、国交省は、民間事業者を直接支援する制度として、「都市機能立地支援事業」も設けている。地域活性化のために、都市機能のリノベーションを支援するものだ。市町村が街づくりの計画を作成し、そのうえで対象区域内では、民間の医療施設や社会福祉施設、教育文化施設、商業施設などの整備に対しても補助金で一部を負担することを試みている。

 こうした施策も含め、最近は、「公共」の概念が変わってきていると感じる。エリアマネジメントなどにおいても、市民の手による公共という「新たな公共」を、街づくりの主体として位置付けている。公共の敷居が低くなっている、ということだ。そう考えれば、公益事業であったとしても、収益を生み出すかもしれない。また、そうしていかなければ立ち行かなくなる面もあるはずだ。

 日本の公共空間はあまり豊かではない、とよく言われる。そうした公共空間の貧しさを埋める1つの手法として、市民にとって公共の敷居を越えやすくするようなエリアマネジメントをうまく活用するのがよいのではないか。(談)