先日、実家に顔を出したら、南側バルコニーに面した掃き出し窓の下にタオルが置いてあった。窓を見ると結露がびっしり。滴り落ちる水滴をタオルでせき止めているという。北側の窓はもっとひどい状態。

南側バルコニーに面した掃き出し窓に結露がびっしり(写真:ケンプラッツ)
南側バルコニーに面した掃き出し窓に結露がびっしり(写真:ケンプラッツ)

 実家は2002年完成の分譲マンション。窓はアルミサッシで、ガラスはシングル。2003年7月のシックハウス対策に係る法令等の施行前に着工した建築物だが、24時間換気システムを装備している。換気方式は、各居室で自然給気し、浴室から機械排気する第3種換気方式。省エネルギー基準(2013年基準)の地域区分は、6地域に該当する場所だ。

 両親によくよく聞いてみると、給気口を閉じて換気扇のスイッチを切っていた。なぜそんなことをするのかと聞いたら、「風が寒いし、花粉や微小粒子状物質『PM2.5』が入ってくるし、電気代がもったいないし…」と言う。

 確かに、自然給気口に手をかざすと風を感じる。しかし、室内で寒さを覚えるほど気流は生じていない。どうも自然給気口の存在自体に過敏になっているようだ。

 結露防止を図るために、内窓を施工する方法もある。ただ、実家のマンションは逆梁工法を採用しており、バルコニーに面した掃き出し窓はハイサッシと呼ばれる開口面積の広い窓だ。内窓が高額な特大サイズになることは間違いなく、場合によっては設置できない可能性もある。

 とりあえず、「結露は健康にも内装材にもよくないので、給気口は常に開けて換気扇は切らないで」と説得した。はたして言うとおりにしてくれるだろうか。

 たぶん無理だと思う。80歳を超える父親は、携帯電話は電池がもったいないからと言って、夜は電源をオフにする。緊急連絡がつかなくなるから電源はいつも入れておくように何度頼んでも、ハイハイとうなずくばかり。いくら注意しても、机の上に乗って天井の照明を自分で交換したがる。

 なんだか年がいくほど頑固になっているみたいだ。家族に対してもこれだから、他人の言うことはもっと聞かないのではないか。

 専門家にとって、寒さ、暑さ、結露など、住みづらさを解消するリフォームやアドバイスは可能でも、住まい手にかたくなに断られたら手の尽くしようがない。「善かれ」と思って提案する前に、まずは住まい手の心を開くことから始める必要がある。ストック活用は究極のサービス業だと思う。


※このコラム記事はケンプラッツのFacebookページのコンテンツを加筆し、再構成しました。ケンプラッツのFacebookページでは最新情報も発信しています。

<追加情報>
 読者のみなさまから多数のコメントが寄せられているので、補足します。

 両親は高齢者なので、一日中リビング・ダイニングにいることも多いです。その中で、給気口を閉じて換気扇を止めて生活している状態だったので、まずは水分の多い空気を外に追い出すことが先決と考え、換気を勧めました。実家は高断熱・高気密の鉄筋コンクリート造マンションなので、隙間による自然換気は期待できませんでした。

 室内外の温度と相対湿度、ガラスや壁の表面温度、換気扇の風量などを実測し、空気線図やシミュレーションソフトで結露を予測して対処することは可能です。でも、手間もコストも掛かる抜本的な断熱改修の前に、住まい方の工夫で少しでも改善できるのなら、それに越したことはないと思います。

 結露は、住まいの悩みの最たるものです。専門家のみなさんなら、コラムに書いたような場面で、高齢者にどのようなアドバイスをしますか。ご意見をお聞かせください。(2015年2月10日19時00分)