「架け替えずに復旧できる」、早期復旧を支えた知恵

 新幹線も多大な被害を受けたが、3カ月弱で全線復旧にこぎ着けた。なぜそれが可能だったのか。日経コンストラクション2014年1月13日号のコラム「ドボク塾」で、当時JR東日本に在籍して震災復旧の支援に当たっていた石橋忠良氏(現・ジェイアール東日本コンサルタンツ取締役会長)が、こう振り返っている。


 1995年の阪神大震災の時、新幹線の高架橋の柱が折れ、スラブや梁が落下しました。関係者は、撤去して架け替えるつもりでしたが、現場を見た私は、「落ちてもスラブや梁は健全だ。ジャッキアップして柱のみ補修すれば復旧できる」と進言し、すぐに作業に取り掛かりました。
 その場では、必要なジャッキの規格を頭で計算しました。スラブや梁を支えていた4本の柱は、一辺が70cm程度だから断面は約0.5m2。一般的に柱の常時の応力度は10kgf/cm2です。とすると、1本当たり50tを支えていたと推測できます。そこで、各柱に100tジャッキがあれば十分に持ち上げられると判断し、すぐに手配してもらいました。結果、約1カ月で高架橋は元に戻りました。撤去して造り直していたら、相当の時間を要したはずです。



 想定外の被害を受けながらもパニックを起こさず、冷静に頭をフル回転して短時間で「知恵」を出す。そして、それを確実に実行できる「力」も持っている。これは東日本大震災の復旧でも大いに発揮された。災害対応で蓄積された経験と技術は、「次なる災害」に備えるための糧にもなる。