光を効率的に利用する研究も

――田辺さんからお話のあった「組み合わせる」というテーマですが、メーカーとしてはどうお考えになりますか。

阿見秀一(あみ・しゅういち)/1950年富山県生まれ。74年富山大学工学部卒業後、三協アルミニウム工業入社、三協立山アルミマーケティング本部副本部長兼住宅商品マーケティング室部長、住宅建材本部住宅企画部長、2012年三協立山執行役員技術統括室長、2014年より現職(写真:中村宏)
阿見秀一(あみ・しゅういち)/1950年富山県生まれ。74年富山大学工学部卒業後、三協アルミニウム工業入社、三協立山アルミマーケティング本部副本部長兼住宅商品マーケティング室部長、住宅建材本部住宅企画部長、2012年三協立山執行役員技術統括室長、2014年より現職(写真:中村宏)

阿見 例えば風を取り入れたい場所では、外側にシャッターを付けて防犯の機能を加える。そういったふうに異なる要素を柔軟に重ね合わせることができ、なおかつスタイルを崩さずに窓として完結しているものを目指さないとなりませんね。メーカーとしては取り組みがいのあるテーマになると感じています。

――既製品で多様なニーズに応えるというのは、難しい面もありますよね。

阿見 そうですね。ただ、お客様の切実なニーズとして把握できた場合に製品化に努めるのは、メーカーとして大切な役割になります。ニーズをどうやって把握するか、どうやってその製品化を果たすかは考え続けていかなければいけない課題だと認識しています。

 現在も重視しているテーマは、やはり断熱性のさらなる向上です。これには、今後も力を入れていきます。

 それ以外では、光を室内にもっと取り入れるためにはどうするかというテーマにも取り組んでいます。例えば、日差しを効率的に使って玄関や部屋を明るくするといった観点で研究開発を進めています。どの場面でどの程度の明るさが必要なのかという基準を設定した上で、製品として提案していくつもりです。

 もう1つ、24時間換気で取り込んでいる外気に熱エネルギーを与える、という製品も研究開発中です。窓からは室内の熱が逃げていくわけですが、その逃げていく熱を回収して換気で取り込んでいる外気に与えることができれば、今まではロスしていた熱エネルギーを屋内にまた取り戻すことができる、という考え方のものです。

田辺 窓というのは、立地ごとに解決法が違うから難しい。高断熱にするにしても高気密にするにしても、都市の中で極めて周りの環境が悪い場合の解決法と、グリーンに囲まれている場合の解決法は違いますからね。

 自然を享受する「パッシブ」という言葉がありますが、「ハーベスティング」という言葉も使われることを知って、これはなるほどと思いました。窓を開けて自然の風や日差しを取り入れることを「収穫」と呼んでいるわけです。

阿見 なるほど。私どもも、そうした視点をしっかり身につけて、人が重ね着で柔軟に寒暖を調節するように、いろいろな機能を選びながら周りの環境に無理なく適応できる建物づくりに貢献することができればと思っています。

左から千葉氏、田辺氏、阿見氏(写真:中村宏)
左から千葉氏、田辺氏、阿見氏(写真:中村宏)

――最後に千葉さんから、こういう窓ができたらいいな、というイメージがあればお聞かせください。

千葉 窓を考える時に、基本的には屋内からの発想が多いですよね。けれども本当は、屋外の人にとっても重要な存在です。例えばサンフランシスコに行けば、ベイウインドー(張り出し窓)にいろいろな飾り付けをしている様子を見ることができる。彼らはそれを、通りを歩く人たちのためにやっているわけです。そのように公共性や街並みに貢献し得るという観点も、何らかの形で発信していけるといいと思います。

――窓は本当に、多様な機能をもっています。それらをどう扱っていけばいいか、本日は事例も交えながら考えることができたと思います。活発なご議論、ありがとうございました。