みやざき・ひろし 1952年福岡県生まれ。75年早稲田大学理工学部建築学科卒業。槇総合計画事務所を経て、89年現事務所設立。主な作品に「中原中也記念館」「安曇野高橋節郎記念美術館」「在日インド大使館」など(写真:鈴木愛子)
みやざき・ひろし 1952年福岡県生まれ。75年早稲田大学理工学部建築学科卒業。槇総合計画事務所を経て、89年現事務所設立。主な作品に「中原中也記念館」「安曇野高橋節郎記念美術館」「在日インド大使館」など(写真:鈴木愛子)

 事務所設立以来、建築の設計とともに複数の建材メーカーと様々な製品を共同で開発してきた。開口部の場合は基本的な性能とともにエネルギーに対する考え方が重要なテーマとなる。その時に、“力わざ”によってねじ伏せてエネルギーロスを小さくするような発想に陥らず、設計者の視点からデザインと省エネルギー性能が両立するサッシができないかと常に考えてきた。

 実際に今の製品づくりでは、性能面の要求水準が1だとすると、0.99でも使えないものだとされる場合が多い。しかし、我々は開口部を介して建築空間をつくっているので、そうした数字以前に、中にいる人にとっての環境や、外部環境との関係を大切にしなければならない。例えば、遮音性が高いオフィスというのは、スペックとしては優れていることになるが、実際に働く人間にとっては外のざわめきが少し聞こえてくるぐらいが心地いいこともある。

 高層オフィスなど管理の面から窓を開けにくい建物ではフィックスの窓を採用せざるを得ない。そうした場合でも、自然の空気を取り入れることをあきらめず、製品の開発を手掛けている。技術的には困難を極め、時間もかかるが、建築家として提案していかなければいけない領域だろう。