建築ファサードの近年の動向の1つとして、中低層のビルにもユニット構法のカーテンウオールを採用できるようになったことが挙げられる。
方立てやガラスの取り付けを現場施工する方法では人件費が高くつく条件の時、近隣国の工場でユニットを製作して持ち込むほうがコストメリットを発揮する。このため日本では1990年代後半にユニット構法の採用が始まったが、近年までは超高層に限定されていた。アラップでは2002年、東京にもファサードエンジニアリング部門を置き、07年竣工の「新丸ビル」に関わった際にすぐにユニット構法を導入した。
サッシメーカーがユニット用の型材をそろえてきた結果、ここ4、5年は中低層ビルでも、東京、大阪、名古屋などであればユニット構法のほうが安くできる状況になった。また、以前は「接合部のシールを現場施工するほうが安心だ」という見方もあったのだが、今では「工場生産のユニットのほうが安定して高い品質を確保できる」という見方が主流になっている。
そうした2000年代に最新だった技術の普及とは別に、最近の動向としてもう1つ、全体にねじりを加えた複雑な形状の超高層ビルが増えていることが挙げられる。中東に代表される新しい超高層に取り組んでいる場所の動きだが、遠からず日本でも、同じようなデザインに挑みたいという設計者やデベロッパーが現れると見ている。
それを実現するには、外壁や開口部の各パネル自体にねじりを加え、きれいに並べていくと全体でツイストしたシルエットになるファサードの設計が必要になる。パネル1枚ごとの変形はごくわずかで、両端でのねじれが5mm程度といったものなので、精度の高い加工技術も必要になる。