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日経コンストラクショントップ

ケンセツ的視点

デザインビルド時代(3)設計は建設会社で十分?

2015/01/07

<<デザインビルド時代(2)設計事務所vs建設会社

 設計・施工一括発注(デザインビルド)方式について、設計・監理専業の設計事務所は危機感を募らせている。東京五輪会場の整備にデザインビルドの採用を表明した東京都に対し、日本建築家協会(JIA)関東甲信越支部は、「透明性の担保」「工期の短縮可能性」「設計思想の維持」「建設会社から設計事務所への丸投げ」などの懸念事項を示し、都の見解を求めた。

JIAが提出した質問書。東京都が2014年6月に関係団体に説明した「設計施工一括発注方式の取扱い」を受け、透明性の担保など8項目の懸念事項を示し、都の見解を求めた(資料:日本建築家協会)

 デザインビルドでは、設計報酬の一部が設計事務所から受注者(建設会社など)に移転する。東京都のデザインビルドは、基本設計とは別に実施設計と施工を一括で発注、基本設計者は発注者支援業務を担い、実施設計者にはなれない(関連記事:「五輪施設にデザインビルド、事業迅速化の切り札に」)。規模にもよるが、設計報酬全体に占める実施設計分はおおむね6割~7割と言われている。設計事務所にとって、設計報酬の減少は死活問題だ。

 建設会社の設計部門が着々と力を付けてきたことも脅威だ。設計事務所と遜色ないデザインができて、施工の技術やノウハウを持ち、維持管理も任せられる――。こんな至れり尽せりのサービスを、「総合力」を武器にワンストップで提供してくれるなら、発注者は両手を挙げてデザインビルドを選ぶかもしれない。

 日経アーキテクチュア2014年9月10日号の特集「経営動向調査2014五輪戦線異状あり」によると、竹中工務店の建設受注高ベースの設計・施工一貫比率は、13年中間期で57%、13年通期で62%、14年中間期で73%と、右肩上がりに増えた。工事費高騰や職人不足を背景に、公共工事と民間工事の両方でデザインビルドが進展している状況がうかがえる。

東京都が想定するデザインビルド。実施設計段階では、基本設計者は発注者支援に回り、実施設計は建設会社、あるいは建設会社を支援する別の設計事務所が担うことになる(資料:東京都の資料をもとに日経アーキテクチュアが作成)

存在価値を示すために何をすべきか

 デザインビルド人気は、2020年東京五輪までの一過性の出来事かもしれない。しかし、設計事務所に求められる職能が変わりつつある現実から目をそらしてはいけない。

 例えば、基本設計、実施設計、工事監理という従来の設計プロセスだけでなく、事業計画作成や経営判断アドバイスなどの「川上」、維持管理などの「川下」も発注者にとってはサポートが必要で、かつ重要な業務プロセスだ。デザインビルドや、新国立競技場で導入される施工予定者技術協力方式(ECI)など、新たな入札契約方式にも発注者支援業務が欠かせない。

 人材もノウハウも不足しがちな発注者の視点に立てば、設計事務所にやってもらいたい仕事はたくさんある。決して設計や監理だけではない。設計事務所は存在価値を示すために変容せざるを得なくなってきている。

 デザインビルドをめぐる動きは、大型プロジェクトに限った話ではない。戸建て住宅のレベルでも、設計・施工を手掛ける工務店の活躍が目立っている。ある建築家マッチングサービス会社で話を聞いたのだが、設計事務所案件の施工を任せられる工務店が減っているそうだ。「施工能力の高い工務店に発注したいが、優秀な工務店は設計事務所案件で勉強して自社の設計部門を強化し、設計・施工で独り立ちしていく」とぼやいていた。

 テレビや雑誌などマスメディアの影響で、建築家に家づくりを依頼する手法が一般化した。だが、最近の建て主は必ずしも潤沢な資金力を持ち合わせてはいない。今は、パトロンでも普請道楽でも大旦那でもない、一般の建て主が身銭を切って家を建てる時代だ。そうしたなか、設計・施工という、面倒がないワンストップサービスを選ばず、わざわざ設計を分離して設計事務所に発注する意義が揺らいでいる。このあたりについて、もう少し考えてみたい。


※このコラム記事はケンプラッツのFacebookページのコンテンツを加筆し、再構成しました。ケンプラッツのFacebookページでは最新情報も発信しています。

デザインビルド時代(4)自称「建築家」は不要

小原 隆ケンプラッツ

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