設計・施工一括発注(デザインビルド)方式は、今に始まった話ではない。1998年2月の中央建設業審議会でデザインビルドの導入が建議され、2001年3月に設計・施工一括発注方式導入検討委員会によって報告書がまとめられている。2005年の「公共工事の品質確保の促進に関する法律」において企業の技術提案を踏まえた予定価格の作成が可能となり、2009年3月には「設計・施工一括及び詳細設計付工事発注方式実施マニュアル(案)」が作成された。以後、検討や試行が重ねられてきた経緯がある。
土木と建築では、設計や施工の進め方が異なる。一般論だが、土木では設計や施工に発注者自らが深く関与することが多い。一方、建築では設計者(建築士)は発注者(建築主)の代理人で、設計内容は建築主事や構造計算適合性判定機関などがチェックする。施工段階では工事監理者が設計図書と施工図を照査して工事を確認し、建築主に報告する。このためデザインビルドは、土木と建築で事業スキームが多少違ってくる。
国内の公共工事におけるデザインビルドは、主に土木工事で導入が進められてきた。建築工事でも導入事例は複数あるが、工事費高騰や職人不足が取りざたされるようになってきた近年、特に増加傾向が顕著になっている。
設計部門を有する建設会社
ここでは、建築におけるデザインビルドについて考えたい。建築設計界では、デザインビルドに対する反発が根深いようだ。2007年8月には、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会(JIA)が連名で国土交通省に要望書を提出した。そして昨年(2014年)6月、東京都が2020年東京五輪会場の整備にデザインビルドの導入を表明したことから、ここにきてデザインビルド是非論が再燃している(関連記事:「五輪施設にデザインビルド、事業迅速化の切り札に」)。JIAは12月3日に「設計業務の激変~公共建築における設計施工一括発注方式の導入について~」と題したシンポジウムを開催した。
デザインビルドによって、設計事務所はこれまで得てきた設計・監理料の売り上げが減る。半面、建設会社はこれまで門を閉ざされてきた公共工事の設計業務に参入できるチャンスを得られる。今後、設計・監理専業の設計事務所を脅かす存在は、同業他社ではなく、優秀な設計部門を有する建設会社にほかならない。
では設計事務所がジリ貧かというと、一概には言えなさそうだ。デザインビルドなど多様な入札契約方式では、人材やノウハウが不足しがちな発注者を支援する新たな業務が発生する。設計事務所は、そうした発注者支援業務に事業領域を広げられる可能性がある。
また、デザインビルドでは、受注者を必ずしも建設会社に限定していない。設計者と施工者のコンソーシアム(JV)も視野に入れている。もちろん、発注者が設定する要件によるのだが………。続きは次回で。
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