数棟の超高層ビルを含む大規模な再開発が進む名古屋駅地区。2027年にはJR東海のリニア中央新幹線の品川-名古屋間が開業予定だ。この注目エリアの減災対策としては、帰宅困難者対策と水害対策の重要性が特に指摘されている。これらのソフト対策について見ていこう。

名古屋市では2014年6月、リニア開通後を見据えた「名古屋駅周辺まちづくり構想(案)」をまとめた。ここでも防災・減災については帰宅困難者対策と水害対策は重視されている(資料:名古屋市)
名古屋市では2014年6月、リニア開通後を見据えた「名古屋駅周辺まちづくり構想(案)」をまとめた。ここでも防災・減災については帰宅困難者対策と水害対策は重視されている(資料:名古屋市)

 現在、1日約110万人の乗降客が利用する名古屋駅。周辺の帰宅困難者対策については、名古屋市や愛知県、デベロッパー、鉄道会社などで構成する「名古屋駅周辺地区安全確保計画部会」が今年2月に発表した「第1次 都市再生安全確保計画」で方向性を示した。

帰宅困難者対策が急務

 同計画では、南海トラフ巨大地震が起こった場合、発災直後は3万4000人が帰宅困難者として名古屋駅一帯に取り残されると試算。このうち約4000人は現状の施設ロビーなどで収容できるが、まだ約3万人分の退避施設が不足している。発災直後に安全のために集まる一時避難場所として使用できる公園や公開空地も足りない。名古屋駅前の開発は今後も進むが、その分を加味しても十分ではない。

 そこで安全確保計画部会では、建物点検とオペレーションの分科会を設置してガイドラインを今年度中に作成する。「ルールを民間事業者に示して、一時避難場所や退避場所として提供してくれるよう協力をお願いする」(名古屋市住宅都市局都心開発部都心街づくり課の鈴木英文課長)。駅前から縦横に伸びる地下街については「現在、地震発生時は来街者には外に出てもらっているが、安全が確認されているところについては退避施設として使用することを運営会社と話し合っていきたい」(同氏)と語る。

 そのほか、開削方式で整備するリニア駅の上部空間についても、一時避難場所にもなる公園としての利用が有力な案として浮上している。