地域にはシンクタンクが必要

――センターができて間もなく、東日本大震災が起きました。

福和 被災状況を見て、名古屋でも土地利用計画を見直す必要があると気付かされましたが、すぐに見直せるものではありません。

 そこで、事前復興計画づくりにまず取り組もうと、公益財団法人名古屋まちづくり公社 名古屋都市センターに設けた「減災まちづくり研究会」に委員長として加わり、「ナゴヤ減災まちづくりビジョン」を今年3月に発表しました。また、減災を進めるには、地域のシンクタンクが不可欠です。名古屋都市センターと協定を結んで様々な連携事業を進めています。

 エリア全体の将来計画も、名古屋の経済界と一緒に「ナゴヤ・グランドビジョン」をつくることができました。

 行政とも連携しています。名古屋市の総合計画や愛知県の「第3次あいち地震対策アクションプラン」づくりに参画しています。

福和氏は、名古屋都市センター「ナゴヤ減災まちづくりビジョン」(2014年3月)、中部経済連合会、名古屋商工会議所を中心とした名古屋の街づくりを考える会による「『ナゴヤ・グランドビジョン』策定の提言」(2013年6月)などに関わり、行政の外側からも減災を訴える。上写真は、地震、水害に強い熱田台地上の三の丸地区に建つ愛知県庁(手前)と名古屋市役所(奥。現在、外壁タイル落下防止の工事中)。両提言では、この地区を名古屋の都市防災の拠点と位置付けている(資料:名古屋都市センター、名古屋の街づくりを考える会、写真:日経アーキテクチュア)
福和氏は、名古屋都市センター「ナゴヤ減災まちづくりビジョン」(2014年3月)、中部経済連合会、名古屋商工会議所を中心とした名古屋の街づくりを考える会による「『ナゴヤ・グランドビジョン』策定の提言」(2013年6月)などに関わり、行政の外側からも減災を訴える。上写真は、地震、水害に強い熱田台地上の三の丸地区に建つ愛知県庁(手前)と名古屋市役所(奥。現在、外壁タイル落下防止の工事中)。両提言では、この地区を名古屋の都市防災の拠点と位置付けている(資料:名古屋都市センター、名古屋の街づくりを考える会、写真:日経アーキテクチュア)

建築の可能性も広がる

――建築技術者にはどのような役割を期待しますか。

福和 1つには、地域でのボランティア活動があります。常日ごろから安全の確保という課題と向き合う建築技術者が、地域の防災・減災活動をなぜ主導しないのか、と訴えたい。まずは「信頼される建築技術者像」をつくっていかなくてはいけません。

 それに加えて、「国や地域、会社を守るために建築に何ができるのか」という建築界の本来持っている役割を、あらゆるところと連携しながら果たしていく。そうして社会の信頼を得ることで、企業や行政の組織のトップと建築の在り方についての話ができるようになるのです。そうなれば「社会で動いている様々な技術成果を統合できる」という、建築が本来持っている可能性は、もっと広がるはずです。