BCP(事業継続計画)の重要性への認識が高まっている。部分免震は「これだけは守りたい」という装置や機器を地震被害から守ることができる。ただし、導入したからといって必ずしもすべてが万全なわけではない。東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震などでは、部分免震装置の上に置いたものが転倒するなどの例が報告されているのも事実だ。コストや免震機構の原理などに目を配りながら、検討を進めていく必要がありそうだ。

CASE 1 実験施設  東京大学共同利用管理本部(茨城県東海村)
3・11で被災、機器固定だけでは損傷を防げない

 「東日本大震災では、アンカーボルトが外れ、ガンマ線の測定に用いるゲルマニウム半導体検出器4台すべてが損傷を受けた。1台は買い替え、3台は修理に出した」。東京大学工学系研究科原子力専攻共同利用管理本部の澤幡浩之氏は東北地方太平洋沖地震時の被害状況をこう振り返る。

 被災したのは、茨城県東海村の日本原子力研究開発機構内にある共同利用の平屋建て実験施設だ。東大が間借りして管理している。機構では、これらの共同利用施設を用いた実験機会を公募で選んだ大学研究者に提供。その共同利用の橋渡し役を東大が担う。

 この日の本震による揺れは、東海村で震度6弱を記録した。ゲルマニウム半導体検出器の心臓部は真空の造りで、地震の揺れで損傷を受けるなどして空気が入ったため、使いものにならなくなった。

 澤幡氏は、二度と同じような被害を受けずに済むよう、地震対策を検討していた。ただし、機構の施設を間借りする立場なので、建物全体の造りに及ぶような大掛かりな対策は打てない。そうしたなかで部分免震を検討し、2014年3月に導入を完了した。

1:ゲルマニウム半導体検出器の並ぶ室内。年1回の公募で選ばれた大学の研究者が利用する。 2:免震装置で支えられた床の上には重量物を持ち込むこともあるので、免震床の揺れを妨げないように固定されていないスロープを設置した。 3:壁面や空調機との間のクリアランス。25cm確保している。 4:共同利用管理本部の澤幡浩之氏。(写真:菊池 斉)
1:ゲルマニウム半導体検出器の並ぶ室内。年1回の公募で選ばれた大学の研究者が利用する。 2:免震装置で支えられた床の上には重量物を持ち込むこともあるので、免震床の揺れを妨げないように固定されていないスロープを設置した。 3:壁面や空調機との間のクリアランス。25cm確保している。 4:共同利用管理本部の澤幡浩之氏。(写真:菊池 斉)

 決め手は、東北地方太平洋沖地震クラスの揺れで100%近い復元力を持っていたこと。そして、レール状にかみ合わせた金属製の支承を持つことから浮き上がりにも強そうなことだった。

 「検出器1台当たりの修理費を200万円としても、部分免震に掛かるコストはその4台分を上回る。しかし、地震の揺れで損傷を受けて修理が必要になれば、数カ月間は研究が滞ってしまう。研究成果の遅れを避けられるなら費用対効果は十分に得られる」と澤幡氏は評価する。