建築設計者や施工者を対象に、「近隣トラブル」に関するアンケートを実施している。調査期間は9月12日までだが、これまでに寄せられた意見を一部、ご紹介しよう。

(イラスト:佐藤 睦代)
(イラスト:佐藤 睦代)

 住宅の建設時に発生した近隣トラブルとして、最も多いのは日影の問題だ。日影規制や北側斜線を順守していても、近隣住宅の住民から「うちの庭には日が当たるように、屋根の形状を変更してほしい」「建物の位置をずらしてほしい」と要求されたといった回答が目立つ。ある回答者は、「発注者の不利益につながるだけでなく、常に庭全体に日が当たるようにすることは事実上、困難なので、状況を丁寧に説明。それでも首を縦に振らないので、最終的には発注者の了解を得たうえで建物の位置を数cmずらすことで誠意を示し、納得してもらった」という経験を語った。

 設計したマンションに隣接するマンション住民から、「全住戸に日が当たるように設計変更してほしい」という要求を出されたという回答もあった。到底、無理な要求だったので、この回答者はパラペットを当初設計より10cm低くし、屋上に設置する目隠し塀を鉄筋コンクリートから透過性の高いポリカーボネート板に変更して誠意を示し、事なきを得たという。

発注者の対応を重視する意見が多数

 トラブルに至らないための説明は難しいもの。意外に目立つのが「住民説明会はできるだけ開かない」という回答だ。「集団になると、当初は建設に反対ではなかった人まで反対するようになる傾向がある」そうだ。

 「近隣住民からのクレームには、設計内容に関する専門的な説明が必要でない限り極力、建築設計者である自分が表に出ず、発注者に対応してもらう」という回答もあった。「設計者には訴えやすいのか、近隣住民からの要求がエスカレートしがち」というのが理由のようだ。

 発注者の対応を重視する意見はほかにもあった。例えば、マンションのリノベーションでは「着工前の近隣住民への挨拶は施工者が対応することが多いが、発注者に同行してもらうとクレームが減る傾向がある」という。

 建築設計者が対応せざるを得ない場合はどうすれば良いのか。「建築設計者が近隣交渉に当たると、弁護士法に触れるのではないか」という疑問を持つ設計者もいるだろう。確かに、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件に関して、仲裁や和解などの法律事務を行うことはできない(弁護士法72条)。

 この疑問に対して、近隣交渉に詳しい日置雅晴弁護士は次のように答えている。「近隣交渉の業務では報酬を受け取っていない建築設計者がほとんどだ。また、建築の近隣交渉で建物の設計変更や工事の段取りなどが問題になる場合には、設計事務所の仕事に関する調整であり、仲裁や和解といった法律事務の範囲に入るかという線引きが難しいので、弁護士法違反で起訴まで至った事例はほとんどないのではないか」

 さて、建築設計者の皆さんは近隣交渉にどのように対応しているのだろうか。

 近隣トラブルに関する緊急アンケート調査を実施いたします。是非、ご協力ください。アンケートは[こちら]から。