経年劣化した建材や設備などを、新築時の状態まで戻すのが「リフォーム」。これに対して、新たな設備を設けたり、内装を一新したりすることで、新築時よりも機能やデザイン性を向上させるのが「リノベーション」。最近、全国紙の記事でも普通に使われ始めた「リノベーション」を定義すると、だいたいこんなところだろうか。

 ほとんど一般用語と化したリノベーション。これを得意とするある企業の役員から、「リノベーションに新規参入した建築設計者や施工者が、想定外のクレームを受ける例が増えている」という話を耳にした。特に区分所有のマンションの住戸をリノベーションする際に、トラブルに巻き込まれる例が多いという。

(イラスト:佐藤 睦代)
(イラスト:佐藤 睦代)

 例えば、新築工事しか経験したことがない内装会社が、工事の騒音にクレームをつけた近隣住民に真正面から反論して収拾がつかなくなることもある。「3日程度で工事が終わるかと思っていたら、2週間以上も続き、戸境壁を解体したり、土間を広げたりすると知って驚いた」と、次々と苦情を言いに来るなど、マンションの住民側がリノベーションの意味を把握していないことが原因で、クレームにつながる例も多い。

管理規約以外の「別紙」で「フローリング禁止」

 別のリノベーション会社の役員からは、次のような話を聞いた。

 「マンション住戸のリノベーションでは、管理規約に即した設計や工事でないと管理組合に認められない。規約を細部までチェックするのは当然。当社では規約だけでなく、管理規約以外の別紙や契約書の欄外までチェックする」

 マンション住戸のリノベーションで、特に発注者からの要望が多いのが、床をカーペットからフローリングに変更する工事だ。しかし、階下への騒音や振動を恐れてフローリングへの変更を禁止しているマンションは多い。ここに落とし穴が潜んでいる。

 例えば、管理規約に「フローリング禁止」という条項がないからといって安心できない。フローリングへの変更を含め、規約に即した内容の設計と工事内容を管理組合に報告すると、「フローリングへの変更は管理規約の別紙で禁止している」といった指摘をされることがあるという。何度か同様の経験を踏んだので、管理規約以外の規定まで確認し、「フローリング禁止ではない」と確信していたら、実は購入時の契約書の欄外に「フローリング禁止」という注記が書かれていたケースもあったそうだ。