防災を日頃から意識することは、震災による様々な困難を経験した場所であっても簡単ではない。地域の場所づくり、コミュニケーションづくりのなかで、「共助」などの意識をどう醸成していくか。石巻市における復興まちづくりの現場に探ってみる。
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市では、ボトムアップ型の復興まちづくり活動「ISHINOMAKI2.0(石巻2.0)」が続いている。地元商店主やNPO職員、首都圏の建築家、都市計画研究者、広告プロデューサー、Webディレクターなどが被災直後に参集し、それぞれの専門性を生かした多彩なプロジェクトを立ち上げてきた。地場での産業復興や店舗再生、起業支援などに取り組み、若手やクリエイティブ層の移住、Uターン促進にも重要な役割を果たしつつある。
活動母体のISHINOMAKI 2.0は有志グループとして始まり、2012年2月に一般社団法人となった。市が全域で進める復興整備計画の一部を補う格好で、主に複数商店街の連なる中心市街地を対象としてきた。現在は県や市から復興関連の事業を受託し、より視野を広げた活動も模索する。その一つが、中心市街地に隣接する住宅地の山下地区などを対象とする「地域自治システム」の構築支援だ。まちづくり協議会の設立を今夏に予定する同地区で、その準備作業に関わってきた。
被災の経験から市民・住民にとって防災は重大な関心事になる。しかし、日常的にそれを意識し続けることができるか、非常時に相互に助け合う地域防災が機能するかどうかは別だ。「昨年の全市一斉総合防災訓練の参加者が全市民の1割に満たなかったと知った。周知の不徹底などが関係するかもしれないが、意外とモチベーションが上がらないのだなと再認識した」と、ISHINOMAKI 2.0理事の小泉瑛一氏は語る。