避難誘導用エレベーター、火災時の一時避難エリアを示す2つのサインーー。東京消防庁が定めたサインを国内で初めて掲示する、高さ約100mの超高層病院が開業した。火災時の避難経路はどうあるべきか、最新の実例から探る。
火災が起こったらエレベーターは使えないーー。
この常識を幾つもの工夫で覆したのが、東京・本郷で2014年3月に開業した順天堂医院の新病棟だ。日本設計が基本設計を、清水建設が実施設計と施工を担った。東京消防庁は非常用エレベーターによる垂直避難経路を想定した建物の第一号として、この病棟を認定した。
最大のポイントは、火元を確実に封じ込め、出火階に「一時避難エリア」を構築する計画にある(図1)。入院病棟階を例に取ると、火災発生の際、まず回遊型の2つの廊下を防火扉で区画する。フロアを半分に区画することで、火元の部屋がないほうのエリアを「一時避難エリア」とし、近距離で水平避難できるようにする。
2つのエリアにはそれぞれ階段とエレベーターを備え付けている。自力歩行が可能ならば下階への避難は原則として階段を使うが、入院病棟には重病患者がいる場合もある。ベッドごとにエレベーターで下ろせれば、避難におけるスタッフの負荷は大きく減る。