Q値ではなく暖房負荷を基準に

 「紫波型エコハウス基準」は、町が掲げる「循環型まちづくり」を意識しながら、有識者と紫波町の担当幹部職員で構成する「紫波町オガールタウン調整会議」で議論を重ねて定めた。調整会議の委員でモデルハウスの設計も手掛けた竹内昌義氏(みかんぐみ共同主宰、東北芸術工科大学教授)は「30年後でも光熱費をなるべく使わず寒くない家をつくるための基準だ」と語る。

 そして、次のように解説する。

 「Q値ではなく年間暖房負荷を基準としたのは、断熱性能を持ちながらも南向きに大ききな開口を取らなくては達成できない数値だから。Q値を上げようとすると窓をどんどん小さくしていってしまいがちだが、窓の小さな家が連なっていても、住んでみたいと思える街並みにはならない。日射取得で暖房負荷を減らすことができれば開放的な家になる。サッシの性能が上がってきたので、開口部を大きく取っても熱は逃げていかない。C値の基準は年間暖房負荷の目標を実現するために設定した」

 断熱材は、きちんと施工して水分が入らなければ長持ちする。「住宅の価値のうち、耐震性能と環境性能は長期的に価値が減らない」(竹内氏)という考えも反映されている。

 町産木材の利用については、資源の循環につながるだけでなく、地域産業の振興という意味合いも強い。オガールタウンで57棟のエコハウスが新築されれば、それだけでも地域にとっては大きなビジネスだが、そこにとどまらず、さらに地域全体の内需掘り起しにつなげていく構想を描いている。