1|日本型FMとは何か

 1980年代初頭に米国で誕生したファシリティマネジメント(FM)の概念は本格的には、87年の日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)の誕生とともに日本にもたらされた。その後、同協会はFMの業務体系を独自にまとめ、標準書を作成し、97年にはFM資格制度を開始する。2014年現在、資格登録者は約6500人に上る。

 米国ではFMを、3Pと呼ぶ3つの要素、つまりPeople(ヒト)、Process(仕事)、Place(ファシリティ)を総合的に調整し、ヒトの働く空間としての建物環境を最適化するためのマネジメント手法と定義付けている。しかし、そこではCRE(企業不動産の戦略計画)等は範囲とされず、主にファシリティの運営維持に焦点が当たっている。

 一方、日本のFMは、P.F.ドラッカーの提唱する目標管理の考え方を基礎に、PDCAサイクルを回し、組織が保有または使用する施設資産を全体的に最適に、かつ改善しながら運営することを目指す。つまりCREの概念を含み、敷地を含めた固定資産を戦略的に運営する取り組みとしても機能している。

 要するに日本型FMとは、働く環境を総合的に管理すること、施設資産全体を戦略的に経営することの両面から、経営組織に価値をもたらすマネジメントの方法論なのである。

米国では一般的に、企業不動産を扱うCRE(Corporate Real Estate)部門と、運営維持を主とするFM部門が別に存在する。日本では計画などの業務から運営維持の業務へと、PLAN・DO・CHECK・ACTのPDCAサイクルを回す仕組みとして示し、総務などの同じ部門が扱う場合も多い(参照:『総解説ファシリティマネジメント・追補版』 2009年・日本経済新聞出版社、資料:松岡総合研究所)
米国では一般的に、企業不動産を扱うCRE(Corporate Real Estate)部門と、運営維持を主とするFM部門が別に存在する。日本では計画などの業務から運営維持の業務へと、PLAN・DO・CHECK・ACTのPDCAサイクルを回す仕組みとして示し、総務などの同じ部門が扱う場合も多い(参照:『総解説ファシリティマネジメント・追補版』 2009年・日本経済新聞出版社、資料:松岡総合研究所)