(4)南米諸国
ブラジルでは現在、「成長加速プログラム」の第2弾として「Planode Aceleracao do Crescimento2:PAC2)が発表、推進されている。主に、ブラジルで2014年に開催されるFIFAワールドカップ、2016年のリオデジャネイロオリンピックに向けたインフラ整備を目的として計画されている。具体的には、都市環境整備、住宅サービス向上、低所得向け住宅建設、水道・電気普及、輸送・物流、エネルギーの分野で、4年間で約1兆6000億レアルの投資が予定されている。
メキシコでは、国家開発戦略計画の下にインフラ整備に関する「国家インフラ計画」が位置付けられる。同計画においては、道路、鉄道、港湾、空港、上下水道、治水・かんがい、電力、石油・ガス開発、精製・ガス・石化など多岐にわたって具体的な目標と計画が設定されている。前政権の「2007~2012年国家インフラ計画」では2030年までに「世界経済フォーラムのインフラに関する国際競争力指標」において、トップ20%にランキングされることを目指していた。現政権でも政策の5本柱の推進と経済目標としての方向性には変化はないとしている。
アルゼンチンでは政情不安な時期が断続的に長く続いたこともあり、長期的視点に立った国家開発計画は策定されていない。唯一の中期的な目標として、2011年2月に発表された「工業戦略計画2020」が存在し、内需維持と輸出拡大の推進、社会的包摂の実現、学校、道路、病院などのインフラ整備、エネルギーの安定供給、外貨準備による債務返済を重要課題として取り上げている。なお、米州開発銀行(IDB)はアルゼンチン向けに、ノルテ・グランデ地域およびグレーター・ブエノスアイレス地域に焦点を当て、開発戦略を策定している。
コロンビアでは、「国家開発計画(NDP)」の中で、インフラに関する開発計画を盛り込んでいる。近年の開発動向では、交通インフラ分野における投資が拡大しており、PPP(public private partnership)スキームの活用が広く検討されている。2011年から2014年にかけての交通インフラ・電力インフラなどを含む「ハード・インフラストラクチャー」部門の投資割合は、交通部門が38%と最大の割合を占める。次いで、通信部門31%、エネルギー部門23%、水・ユーティリティ部門8%となっている。総投資額は267億9500万米ドルを見込んでいる。
ペルーは、国家戦略計画センター(CEPLAN)が「PLAN PERU2021」(後に「Plan Bicentenario(200周年計画)」へ名称変更)と題した中期開発戦略を策定している。一方、現時点では全セクターを網羅した国家開発計画は存在せず、個別プロジェクトは各省のセクター開発計画や、大統領・首相の所信表明演説に基づいている。なお、米州開発銀行(IDB)はペルーにおける開発計画について、住宅および都市開発や、衛生・水資源および廃棄物管理、エネルギー開発、輸送開発を含む、九つの重点領域を設定している。
詳細は、http://www.nikkeibp.co.jp/lab/mirai/megatrend/infra-ind.html。
なお、3月14日に「インフラ産業2014-2023」発刊記念セミナーを開催する。
日本総合研究所 総合研究部門 社会・産業デザイン事業部 グローバルマネジメントグループ ディレクター兼プリンシパル