(3)運輸交通産業

 交通関係のインフラに与える主な要因としては、都市化、高齢化、中間所得層の増加、国際分業の進展の四つの視点から整理される。また、運輸交通の分野の課題と対応は、移動範囲と利用人数によって移動範囲を「地域」、「都市内」、「都市間」、「国際」の4レベルに分類できる。なお、運輸交通分野の課題は移動範囲によって異なる。例えば、都市内交通の課題(渋滞、大気汚染)解決のために、バイク・自家用車からバス・鉄道への転換、環境・エネルギー問題への対応のため鉄道の普及など、移動範囲ごとの課題、対応が存在する。

 運輸交通産業の将来像は、「インフラ不要」に向かうと予想される。初期投資が必要なインフラは、新興国にはなかなか普及しにくい。このため、インフラ整備にかかる初期投資を軽減することにより、サービスの普及の促進を図る。例えば、自動車交通のロードプライシングも、道路上に車両感知器を設置し流入車両を検知するのではなく、全地球航法衛星システム(GNSS)によって車両位置を把握し課金するという方法が可能になっている。また、次世代自動車として何が主流になるかによって、今後普及する新しいインフラが決まる可能性がある。

(4)情報通信産業

 インフラ分野も含めて、今後の世界の情報通信産業市場は、米国、アジア・太平洋が大きなマーケットになる。情報通信産業は今後、年平均5%前後の成長が見込まれる。市場規模は5兆米ドルに近付くなど、成長著しい有望な分野である。地域別にみると、市場規模が最も大きいのは、情報通信技術の利活用が進んでいる米国であり、今後の経済成長に伴い7.2%の伸びが期待されるアジア・太平洋地域が続く。さらに、情報通信産業の発展に伴い、スマートシティ/スマートコミュニティをキーワードに、情報通信技術を組み込んだ社会インフラ(電力、ガス、水道、鉄道など)の整備が進められている。北米も伸びているが、特に欧州やアジア・太平洋で、インフラ投資についてのニーズが出てくると予想されている。

(5)静脈産業

 新興国を中心とした都市化、人口増加、工業化に伴い、廃棄物排出量は早いペースで増加する。2050年には、廃棄物の約90%を占める産業廃棄物が世界全体で2倍強(2000年比)となる。一般廃棄物も同様に2倍程度の伸びを示し、アジアが最大の排出地域となる。新興国の経済発展に伴い、各種汚染物質の排出が進み、PM2.5に見られるような社会問題が顕在化し、環境関連市場規模が拡大する。また、工業化の進展は資源使用量の増大を引き起こし、レアメタルなどの資源確保を目的としたリサイクルが進展する。

 マーケット予測廃棄物排出量の拡大に伴い、アジアにおける廃棄物処理市場は大きく拡大する。10年ごとに約2倍のペースで拡大し、2030年には約1.7兆円規模になる。一般廃棄物の廃棄物処理装置市場が最も大きく、地域別では、中国の市場規模が最も大きくなる。

(第3回は3月12日(金)に掲載する予定です。)

[参考]日経BP社は2013年12月、新興国へのインフラ輸出または拠点進出を検討する日本企業に対し、今後10年のインフラ産業の動向をまとめた産業予測レポート『インフラ産業 2014-2023』を発行した。インドや南アフリカなど25の新興国における産業構造や主要なプレーヤーの動向、国の政策・計画を網羅するとともに、電力・ガス、水、運輸交通、情報通信など、産業ごとに中長期の将来像を見通した。
詳細は、http://www.nikkeibp.co.jp/lab/mirai/megatrend/infra-ind.html
なお、3月14日に「インフラ産業2014-2023」発刊記念セミナーを開催する。
時吉 康範(ときよし よすのり)
日本総合研究所 総合研究部門 社会・産業デザイン事業部 グローバルマネジメントグループ ディレクター兼プリンシパル
時吉 康範(ときよし よすのり)石油化学メーカーで新規顧客開拓、新規事業の企画・開発、海外マーケティング・アライアンス交渉などに従事後、株式会社日本総合研究所入社。グループディレクターとして、インドを中心とした環インド洋諸国・環ベンガル湾諸国に焦点を当て、日本企業の事業化を促進するために、日本の制度輸出、事業案件発掘、2国間の相互理解の運営などを支援。 プリンシパルとして、大手BtoBメーカーの成長戦略策定と実行支援、特にコーポレート部門の研究開発戦略、新規事業開発戦略、技術経営人材育成などを支援。英国国立ウェールズ大学経営大学院「技術経営戦略」「イノベーションマネジメント」講師。