インフラ形成において重要と思われる(1)電力・ガス産業(2)水産業(3)運輸交通産業(4)情報通信産業(5)静脈産業の五つの産業分野の将来動向を概説する。

(1)電力・ガス産業

 産業発展のために電力は不可欠の要素であり、安定・効率供給のための技術開発と投資も進むと思われる。電源構成別では、火力発電は今後も一定の比重を占めるが、環境配慮の意識が進むため、今後は再生可能エネルギーの導入が進むと思われる。なお、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で動向が注目される原子力発電については先進国では抑制傾向となるが、新興国においては今後も一定の導入が見込まれる。ガスは電力発電の原料という側面があるが、シェールガスなどは、特に石炭や石油などの従来の資源に対しての有効な代替物として注目されている。なお、化石燃料の利用については、環境配慮の観点からCO2の発生をどのように抑制するかという観点からの研究開発と投資促進が要請される。

 電力のマーケットについては、2012年から2035年にかけて、非OECD圏の石炭火力発電が大きな伸びを見せると予想される。金額にして1兆1580億米ドルで、セクター別で見ていくと水力を超える。一方、OECD圏の風力もそれに匹敵するほどの規模となると考えられる。OECD圏において石炭火力はさほど増えないが、投資額で見ると大きい。先進国で建築する際には、より高効率の技術を求める圧力がかかるためイニシャルコストが上昇する。投資額で見ると、新興国と先進国では約2.5倍の差があるが、実際の発電ベースでは差はさらに広がるだろう。

 ガスのマーケットについては、インドネシアから日本へ輸入される天然ガスは、将来的には減少し、逆に、現在は極めて少ない米国からの輸入量はシェールガスの開発によって将来は大幅に増加すると予想されている。また、ロシアから日本への輸入量は増加する見込みである。なお、中東からの輸入量は減少し、オーストラリアからの輸入量は増加、アフリカからの輸入量は大きく増える見込みである。